第12詩 【雨の夜】


雨の夜 踵(かかと)を冷たくして歩いた


二足のサンダルが濡れる そこから雫が泳ぎながら垂れる


夜の天から降る雨の音を聞いて歩いた



ちいさな人をちいさな紺色の傘が包んでいる


人はそこでよく その傘のつぼみの中で


あたたかく 黄昏(たそがれ)るものである



雨足が襲ってきても なお


水のつぶがくらくら揺れたりする 雨間の光りに心を強く奪われている


街は 雨水の白粉(おしろい)をぬっている 二夜にまたがり雨は言葉として降ってくる



たびたび私は雨中にたたずみ 冷たいかかと(かかと)をふりあげ 雫を切った


賑わしい雨のつぶてが躍(おど)りあがった ゆかいに地面にしみこんだ



雨の夜 踵(かかと)を冷たくして歩いた

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