第10詩 【ゆめものがたり】


夢はひとところで


静かであった まるい火の太陽を


独り野性人となり 信じた夕べに……



  (海岸をゆく

   わびしい外国人(エトランゼ……))



幾隻(いくせき)もの帆舟が


鋭雪(えいせつ)立った白波を 白い飛沫を


沖へ沖へとかいくぐってゆく



  (私たちの浮かぶのは 唯ひとつの

   夢を見るためです……)



さみしいエトランゼの足跡は


なんべんも蟹の小穴を壊しながら


生きゆく人の生の形骸(なきがら)を


夕暮れの浜辺に 平凡に残してゆく



  (僕は信じるだろう……

   自然が人についての 愛を折る夕べがあることを)



風景画家が絵筆をにぎり


トンカラ トンカラ 鶴がはたおり


ひとりの幼い少年が ハーモニカを吹く



  (僕は信じるだろう……

  人の夢が 今宵もどこかで 燃焼されることを)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る