第31話 2/23 告白をどうするのか

2023年2月23日 木曜日

 俺はいつもの平日と同じ時間に学校に着いた。

 見たところ、平野さんはいない。

 流石に、昨日は受験があったから疲れているだろうし休みかな。


「おはよー」


 奥川さんはいつも通りに挨拶をしてくれたけれど、何だか元気が無い。

 まあ、理由には察しがつくけど。


「元気が無いな。島田」


 早速このことに突っかかったのはやはり鉄平だった。


「だって、何で今日学校あるかなー」

「まあ、それについては俺も同感だ」

「仕方がないよ。学校が決めたことだし」

「でもさあ、せっかく受験が終わった次の日が休日なのに学校って……」


 奥川さんは机にぐでぇと上半身を付けた。


「まあ、卒業式まであと6日だしね」

「そう言えば、今日は何するんだ?」

「卒業式の練習だよ」

「えぇーめんどくさいー」

「まあ、俺もその気持ちは何となく分かるよ」


 そう言ってふと時計を見ると、時刻は朝の会開始1分前になっていた。


「そろそろ、席に戻るね」


 そう言うと、俺は自分の席へと向かった。

 そして、それと同時に勢いよくドアを開く音が聞こえた。


「おはよー‼」


 朝の会開始1分前に元気よく挨拶したのはやはり島田さんだった。














放課後

「つーかーれーたー」


 放課後と言ってもまだ午後1時なのに島田さんは既に一日の体力を全て使ってしまったようだ。


「お疲れ!」


 奥川さんは島田さんの肩をポンポンと叩いた。


「帰ろー!」

「そうだね!もう疲れたし、今日は帰ろ!」


 俺たちは、いつも通り帰ることにした。








「それじゃあね!」


 島田さんは、元気よく挨拶をすると、そのままマンションの中へと入って行った。


「また、鉄平と2人で帰ることになったね」

「そうだな」

「でも、これもあと少しだね」

「そうだな」


 鉄平は、いつもと変わらない相槌を打っていた。


「みんな、進路が違うからこのまま同じってわけにはいかないよね」


 俺は、朝から心の中にあったことを鉄平にぶつけてみた。

 何だか鉄平なら面白い考えを教えてくれそうな気がしたから。


「どうした?今日はやけに感傷的だな」

「まあね。朝、カレンダーを見てみたら案外時間無いんだなって思って」

「なるほどな。まあ、卒業しても会うことはできるだろ」

「それは、そうだけど今まで通りってわけにはいかないし」

「それはそうだな」

「何だかドキドキしない?」


 俺は、この気持ちに何て名前を付けて良いのか分からず、ドキドキという言葉を使った。


「それは、平野にか?」


 それに対して鉄平は茶化すように返事をした。


「違うよ!」


 俺は、即座に否定した。

 いや、平野さんに対してドキドキしているのはあながち間違いではないのだけど。


「そう言えば、平野とは上手くいっているのか?」


 鉄平は、少しにやけながら聞いてきた。


「まあ、どちらともいえないって感じかな……」

「なんだ、上手くいってないのか?」

「いやっっ、そんなことは、、」


 俺は言葉に詰まってしまった。

 間違っていると否定できなかったから。


「大丈夫か?卒業まであと少しだろ」

「それは確かに」

「3月1日までは時間無いぞ」

「分かってるって!」


 俺は、少し困った顔のまま否定をした。

 正直、卒業までの時間は俺も焦っている。

 俺が、そっぽ向いていると鉄平は少しの間静かになった。

 こういうところの間の取り方は凄く上手いな。

 ちゃんと踏み込んでいいラインを分かっている。

 俺は、しばらくそのまま話をしなかった。



 気が付くと、俺の家の前まで来ていた。

 今日は久しぶりに鉄平がじゃんけんで負けたから俺の家まで着いてきてもらっている。

 今日は休日だけど、この時間なら親はまだ家にいないだろう。

 俺は、鍵をバッグの中から探した。

 そこで、鉄平が話かけてきた。


「そう言えば、今週の土曜は水族館で日曜日は花火をみんなでする予定だよな」

「そうだね」


 俺は、何が言いたいのか分からず相槌を打った。


「せっかくだし、そのどっちかで平野に告白したらどうだ?」


 鉄平の表情はいつもの余そうな表情に戻っていた。


「えっっ、、」


 俺は、それに対して驚いて答えに詰まった。


「なっ、何を、、」

「どうした?意外と良い考えだと思わないか?」

「確かにそうだけど……」


 俺は、右手をバッグに入れた状態で固まった。

 確かに、告白するには絶好の機会だろう。

 でも、いざ告白の2文字を聞くとすくんでしまう自分がいた。


「どうした?」


 鉄平は、不思議総だけど俺の気持ちを全て見透かしたような顔をしてこちらを見てきた。


「まあ、考えとく……」


 俺は、直ぐに答えを見つけることはできなかった。


「そうか。まあ、困ったことがあったら相談くらいなら乗るからな」


 鉄平の表情は特に変わっていなかった。

 きっと、今の俺の考えを全て見透かしているのだろう。

 俺は、分かったとだけ返事をした。

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