第24話 2/16 2人の会話

2023年 2月16日 木曜日 第3週目

 平野さんは今日も休みみたい。

 なんだか、最近は休みが多いような気がする。

 まあ、寒い季節だし体調も崩しやすいのだろう。

 俺は、水稲のお茶を一口飲んだ。



「ねっ、明日香ちゃん‼昨日は何してたの?」


 俺たちは昼ご飯を食べ終わると、欠席の平野さん以外の全員が集まっていた。

 島田さんはやっぱり昨日のことが気になるらしい。


「えっとー、友達と出かけてたよ」


 奥川さんは同様することなくいつもの声のトーンで答えた。


「ホントにー?」

「本当だよ」

「じゃあ、友達って誰?」

「別に誰でもいいじゃん」

「気になるー‼」

「おい、うるさいぞ。作業に集中できん」


 鉄平が真剣な顔をして英語の課題をしていた。


「別に鉄平の課題がどうなろうと私は興味ないし‼」

「俺がよくねぇんだよ!」

「じゃあ、課題してくればよかったじゃん‼」

「いつも課題をチェックしない佐藤だったから大丈夫だと思ったんだよ」

「そういうところだよ、鉄平‼」


 島田さんがいつも鉄平に言われていることの真似をしているかのような答え方をした。


「お前にだけはいわれたくねぇ!」


 鉄平の叫びは虚しく教室に響いた。










放課後

 鉄平の課題の提出のために職員室の横で俺は待っていた。

 横にはポスターがいくつも張られている。

 ほとんどは高校の倍率とかポスターとかだった。


「よっ、待たせたな」

「課題は提出できた?」

「まあな。説教付きだったが何とか出せた」

「相変わらずだね」

「まあな」


 俺は、床に置いていた荷物を持った。


「優気は何見ていたんだ?」

「ああ、受験の張り紙だよ」

「そういえば、もうすぐ、公立の受験だな」

「そういえばって、鉄平は大丈夫なの?」

「まあ、この調子でやれば大丈夫だろう。優気のほうはどうだ?」

「こっちは少し自信ないかな、、」

「まあ、何だかんだあと7日だもんな」

「そうだね」


 俺は、少し自信なさげに返事をした。

 そして、荷物を持って学校を出た。



 鉄平と受験のことについて話をしたおかげで、今日はいつもよりやる気がある。

 俺は、ご飯を食べてからいつもより30分早く勉強を始めることにした。






 数学の問題集に一通りできたところで置時計の針を見た。

 時刻は20時ちょうど。

 俺は、少し休憩する目的で携帯を開いた。


 ピロン


 すると、それと同時にメッセージの通知音が鳴った。


<メッセージアプリ>

ASUKAー最近大丈夫? 学校に来れていないみたいだけど


 メッセージは奥川さんからだった。

 でも、内容から察するにグループチャットじゃなくて、個人チャットで送るつもりだったのだろう。


<メッセージアプリ>

さくらー大丈夫だよ。心配してくれてありがと!



 平野さんがそれに気が付いたのか分からないけれど、返信が来た。


<メッセージアプリ>

ASUKA―公立の受験はするの?


さくらー今のところはその予定


ASUKA―でも、無理しなくてもいいんじゃない?

     今後のためにもできるだけ、体を休めておいたほうがいいと思う


さくらー心配してくれてありがとう。でも、自分で受験はするって決めたことだから最後まで頑張ってみるよ


ASUKA―そっか。もし、やばくなったらすぐに私を呼んでね! 他のみんなが気づいたらきっと今まで通りじゃいられなくなるから


さくらー分かった。頼りにしてるね



 ここでメールのやり取りは終わっていた。



 どうやら、本当に奥川さんには秘密があるみたい。

 しかも、その秘密は平野さんに関係したもの。

 加えて、俺だけじゃなくて他のメンバーの誰にも話をすることができないようなとても深刻なものなのはこの会話から察しがつく。

 でも、何だろう。

 文面から察するに体調に関することだろうか?

 けれども、平野さんの体調が悪いのは今に始まったことではない。

 俺たちに隠すことでもないだろう。

 なら一体……。


 俺には明確な答えを出すことが出来なかった。

 そして、こんな感じで俺が何もできないでいると、奥川さんと平野さんのメッセージの両方が次々と消されていった。

 きっと、本当に個人チャットとグループチャットを間違えだったのだろう。

 わざわざ消したってことは、みんなに見られたくないということなのか……?


 謎は深まるばかりだった……。




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