第9話

飲み会

 次の日の夜、約束通り予定を空けておいた。陽子と村上さん、盛山さんがいた。盛山さんは私の先輩で村上さんの後輩でもある。私自身、盛山さんとは特に仲がいいわけではなく、ときどき何人かで飲む時に飲むくらいの仲だ。

「じゃあ、何飲む? 」と村上さんがみんなに聞き、各々飲みたいものを選んで乾杯をした。

「今週もお疲れ様でしたーー」

 他愛のない会社への不満や上司の愚痴を話し、みんなが酔い始めたころ、陽子が酔った勢いで

「私とはるは再来週の土曜日に街コンへ行くんですよ」

 と、盛山さんと会話をし始めた。

「そうなんだ。会社に通ってるだけじゃ出会いないもんね」

「そうなんですよ。出会いなくって。村上さんに聞いたら街コンを勧めてもらって、行くんですよね」

 陽子は楽しそうに話す。

「いいね。私、街コンは行ったことないからさ。行ったらどうだったか教えてよ」

 陽子が何を話すのか気になって片耳を立ていた所に

「はるはどうなの?」

 盛山さんが料理を自分のお皿に移している私に聞いてきた。

「街コンへの意気込みについて、どうなのかなって」

「いやー……、楽しみですよ。出会いもないし。それに私、このままじゃなんて言うか、枯れそうなんですよね。そういう恋愛心?みたいなものが。枯れそうだから満たしに行こうかなーって」

 急に振られ、考えながら話したつもりだった。酔っているためなんだか余計なことを言ったそんな気がした。

「そうよねぇ。私も仕事し始めてから出会いが減ったもん」

「あれ、でも彼氏いるんじゃないの」

 村上さんが盛山さんにつっこんだ。

 できる前ですよーーと盛山さんが笑いながら答えた。すごいなぁ。

 私なんて今は会社での人間関係を保っているのみで、新しい関係を築く時間も維持する時間もない。今まで仲良かった人たちとも離れていく。時間がないと言ってしまえば終わりなのだが、どう抜け出せばいいのか分からない。抜け出す方法も解決する方法も全然検討が付かない。

「ところで、街コンってどんな服装でいけばいいですかね」

 自分の中で切り替えるため脈絡のない会話を始めた。

「えっ、服装?」

 突然の話題転換に村上さんが復唱してきた。

「街コン行くのが初めてなんでどういう服装が正しいのかなぁってにして」

「なるほど。服装ね。人の見た目は外見で決まるって言うもんね」

 盛山さんが返事をしてくれた。

「夜行くか昼行くかにもよるかもね」

 村上さんも考えながら答えた。

「やっぱり、こういうのですかね」

 陽子がスマホの画面を見せてきた。

「これをもし着てきた人見たら狙いに来たなって思うかも」

  軽く笑いながら盛山さんが答えたが、村上さんが

「狙いに来たなって思ってもらった方が相手も来やすいんじゃない?」

 少し早い間で回答した。

「そうですよね。来てもらわないと」

 陽子が村上さんに楽しげに返事を返した。

 服装については、盛山さんから自分の好みで少しよそ行きの格好がいいのではという助言をもらった。参加者の男性側にもおしゃれな人もいるし、気にしてない人もいると村上さんからも情報を得ることができた。

 私自身も好みではない服装は着たくはないし、仮に私のことを良いと判断してもらったとして普段とのギャップがありすぎても困る。一人で考えてたときよりは少しスッキリしたので聞いてよかったと思う。

 これで飲み会に集中できる。そんな気がした。

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