第4話

部屋

 私の住む家は一人暮らし向きの何の変哲もないただのアパートぽいマンションだ。別に自分の性別に対して心と身体の違和感はないが、ただ若干の世間とのギャップがあるのではないかと感じる時がある。ピンクが好きなわけでも、スカートが好きなわけでもないし、料理が得意なわけでもない。でも、一応女なので部屋を選ぶ記述の1つにオートロックを採用した。

 部屋に帰るためのパスワードは長年変更されていないからか、万が一忘れても開けれるんじゃないかと思うくらい特定の番号は色が剥がれているテンキーにいつもの番号を入力する。

 無事入口が解除され、階段を上る。門だけ謎にテンキーが備え付けられているなんちゃってオートロックではなく、建物入口から自分の部屋へ行く道のりは一応廊下になっている。外とは気持ちばかりの吹き抜けの壁で区切られており、壁の反対にはそれぞれの部屋に繋がるドアがある。誰にも会わず、狭い廊下を歩き、自分の家へと着いた。

 部屋の鍵は複製しにくいらしい。失くさないためにキーホルダーを付けているが、何の愛着もない。鍵を開け、部屋へと入る。

 酔いもあってかいつもより眠い。座る前にシャワーに行こう。座ってしまったら確実に寝る。荷物と上着をまとめて部屋に置いて、そのまま手を洗い、コンタクトを外した。

 私は23区内に住んでいる。オートロックのある物件で、独立洗面台がある70,000円台の部屋。駅も徒歩圏内で、会社も一時間以内に着くためここにした。

 部屋では仕事着から手に届いたパーカーを着る。ちゃんとしたブランドの部屋着に憧れはあるが、人に見せるものでもないので買っていない。

 内心、都会に来たからこそ丁寧な暮らしができると思っていた。いい物を買って充実した日々を送る。そんな暮らしに心の片隅に憧れはあるが、お金と時間が間に合わず洗顔は泡が出てくるもので、洗う。

 私だってもう少し余裕があれば丁寧な暮らしができるはずだと思うことが多々ある。自炊だって本当はしていた。就職してだんだんと帰りが遅くなり、食事の時間は自分のためにかける時間ではないなと感じ始め、コンビニかもしくは時短ご飯になっていった。

 作ったものをSNSに投稿し、料理に対するモチベーションを上げることもできるが、そこまで料理好きではない。入社した頃までは何を食べようかと考えていたが、食べるものを考えることすら疲れてサボっている。

 部屋には、座椅子とこたつがあり、セミダブルのベッドがある。備え付けのクローゼットはあるが、入りきらないので組み立て式の棚やカラーボックスなどを置いてる。少しごちゃついてる部屋で時々落ち着かない。一度断捨離をすればスッキリするのだろうけど、気持ちだけだ。

 お風呂は基本はシャワーで、気が向いたときに湯船に浸かり、入浴剤を入れる。入浴剤を入れることとときどきする顔パックは私の中の唯一の丁寧な暮らしである。今日は酔っていることもあり、シャワーで終わった。

 髪の毛をまぁまぁ乾かして、やっと座れた。靴を脱いでから約50分が経った。寝落ちせず、お風呂に入れた自分を褒めたい気分。

「つかれたーーーーーーー。」

 1人暮らしをし初めてかれこれ10年目になろうとしている。1人の時間が多く独り言が多くなった感がする。心で自問自答するのだけれど、心の声の行き場所がなく盛れだしているんだろうな。

 仕事と飲み会へをこなし、やっとできた自分の時間は、いつもは特にやることもなくテレビ番組か動画サイト漁る。ピンと来るものがない日はやることがなくなるため、寝るまでの時間が長い。今日は飲み会の疲労があるためいつもより疲れている。

 今日は観たいテレビがない日のため、BGMとして適当な動画を流しベッドに横になり、スマホを触ったついでに街コンについて調べ始めた。

 

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