11 ジョーの毎日

僕はジョー。ぱっとしない見た目、ぱっとしない実家。なんのとりえもないがどういう理由かアレン様のところで働いている。


配属も最初は別のところだったけど、そこの書類の間違いを他の人の分まで、がんばって訂正していたら、ある日ロード様がやって来た。


「最近書類を書くものが変わったのか?」いつもの厳しい声に僕たちは震え上がった。


「こいつがやっています」いつも僕に仕事を押し付ける先輩が僕を前に押し出した。


ロード様はそれを聞くと


「荷物をまとめてついて来なさい。室長には話を通してます」と言った。


「ゆっくりでいいですからね」と僕に向かって言うと


皆に向かって


「出来てる書類があったら持って行きますが・・・」と言った。


「後で持っていきます」と皆が机にしがみつくようにして言うのが少しおかしかった。



こうして僕はアレン様のもとで働くようになった。


仕事に慣れてくると、かなりの書類が僕のもとに回ってくるようになった。


やばい機密事項もあったが、僕は決して漏らさなかった。かなり誘惑もあったが、やせ我慢、もとい見向きもしないように努力した。



そんなある日、アレン様が少年を一人連れて来た。


黒髪に黒い目と珍しい組み合わせだ、綺麗だなと見ているとアレン様がそのイズミの部屋のことでお使いを頼まれた。


アレン様の近く??それって! それなのにイズミは城をでる前提で挨拶をしてきた。


僕は侍従長に当てた手紙を持って、歩く疑問符となって歩いたのだった。


手紙を読んだ侍従長の顔は見ものだったがすぐに立ち直って


「すぐにいらしても大丈夫でございます。お待ちしております」と言うと足早に去って行った。


イズミは不思議な人だった。僕はてっきり実家に問題ができた貴族をアレンが連れて来たんだと、もしかした婚約するんだと思ったがそうでもないような事を言うし、庶民として振舞うのに生粋の貴族って感じもするし・・・・


ただ、アレン様の特別だと言うのは間違いなかった。



そのうち僕もよその人から聞かされて、イズミが神子様と一緒に召喚された人だとわかった。


神子様は威張って偉そうにしてるけど、庶民中の庶民で礼服を着ても全然似合わなかった。


そして、召喚の時イズミに失礼な事をしたらしいレオナルド王子殿下もなにかとイズミを気にかけて話しかけたり図書館で待ち伏せしたりするようになって来た。


そして神殿に行った日、多分僕だけが気付いた。


ワタヌキの神託の板を見たイズミが驚いたのに・・・


なにやら、名前の文字の上の部分の事を話していた。そして僕は改めて思ったが、神子様のことは神子様と呼ぶからお名前を覚えているものは少ないのではないかと・・・


今の神子様もワタヌキは覚えているが、他の部分は覚えていない・・・・


あの日イズミは歴代神子様の神託の板を見たんだ。なにか気づいたのかも知れない。


イズミがいなくなったお城はぴりぴりしている。アレン様もレオナルド王子殿下も自分の身内に怒り狂っていて、女性陣は皆自室から出てこなくなっている。


そのうえ、お二人共、イズミを一人残した事で自分を責めている。


僕もそうだ。あの時従兄弟の結婚式で僕は休暇をもらって城を留守にしていたんだ。


いろんな事が重なったんだ。イズミを一人にしてしまったんだ。悪意の中に・・・


決めた。アレン様に神殿の事を話してみよう。僕がくよくよ考えても解決しないし。


なにかすることができればアレン様も気が紛れるだろうし・・・・



アレン様に神殿の事を話して、もう一度あの神官に会うとワタヌキの神託の板を見たときにイズミが神子の名前のことを話題にしたと教えてくれた。


なにやら考え込みながらアレン様は歩いていたが、ふと前を歩く男を見るとすぐにその男に追いついて話しかけた。


男はちょっと怯えていたが、僕が話すとちょっと安心したようだった。


男はイズミの服を着ていたのだ。その服を買った店を教えてもらって僕たちはその店に行った。


古着屋の店主はその服の売り手を覚えていた。しかし売ったのは金髪の男だった。


どういうことなのだろう・・・・やはり誰かがイズミを攫って行ったのだろうか?


アレン様はそれからまた、魔獣討伐に出かけた。今度は神子様とレオ王子殿下も一緒だ。

僕は無事を・・・イズミやアレン様、一応神子様。とにかく皆の無事を祈るだけだった。

 




これで一章が終わります。お城をぬけだしたイズミ改リルの本当の転生者生活が始まります。再開まで少しお時間を下さい



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