13 お誘いを受ける

ジュリエットが通りを見ていたら茶色の髪を後ろで結んだ男が看板を確かめていた。その口がジュリエットの形になった。そうここは『ジュリエットの店』一度下がって店内を確認すると男が入って来た。


「いらっしゃい」と声をかけた。


「じゃまするよ」と男はいうと店内を見ている。それからジュリエットのそばにやって来ると

「ロメオさんの紹介で来たんだが」と切り出した。


「ロメオさんからですね」とジュリエットが返すと、ちょっと苦しそうになって


「はい、実はこれのホールダーがついたベルトを作って欲しくて」と武器を見せた。


「カウンターに置いていい?」


「どうぞ、ってちょっと待って」と言いながら布を置いた。


男はその上に丁寧に武器を置いた。


「なるほど・・・さわっていいですか?」


「かまわない」


「どういったベルトをご希望ですか?」


「よくわからないが・・・おすすめある?」


「そうですね、ベルトポーチ機能を持たせてそれにホールダーをつけるのはいかがですか?そこに置いてあるものを見てください」


男は手に取ると

「これか?」といいながらじっくりとみている。


「なるほど機能的だな。それで頼むよ」


「色は?」と見本を見せると


「濃い灰色がいいが・・・」と指差す。


「わかりました。来週の今頃で」


「頼んだ」とさっさと店を出て行った。


なに、御貴族様ってとジュリエットは思った。値段も聞かずに・・・・庶民ぶってもわかるんだからね・・・



ベルトを頼んだ後、リルは刀の使い心地を試してみたいと思い、門からでると森に向かった。


依頼をうければ良かったとちらっと思ったが、まっいいかと進んで行った。


薬草を横目で見ながら進んでいくと、初心者が討伐する角兎が突進してきた。


反射的に石をぶつけて経路をずらす。なんなく地面に着地した角兎は素早く向きを変え、飛び上がろうとしたが、リルのほうが早かった。


飛び上がろうとした所にかまえられた刀の刃に自らぶつかった形で、ころりと転がった。


リルは足を結わえて腰に吊るした。待っていると二匹同時に飛んできた。


一匹は石をぶつけて牽制し、一匹は飛んでくるのを待ち構えてみねの方で勢いを抑えた。

牽制した一匹は飛びかかってくるのを何度か、かわしてから、切り捨てた。


ちなみに獲物の出血は血の匂いが、嫌なので回復で出血を止めて腰にぶら下げている。


さて、気が済んだリルは町に戻った。リルは列に並んで角兎を出した。


「討伐の依頼を受けてないんだが、これってどういう扱いになる?」


「討伐の依頼を受けた処理にしますね。それから肉や毛皮を買取りますのであちらに出して下さい」


「はいよ」と答えて振り向くと前に壁が出来ていた。見上げるとあの逃げるように言った男だった。


「見つけたよ、どこに行ってたんだ。あのギガネコは君がいないと倒せなかった。いや全滅してた」


「そうですか?僕は・・・その・・・」見物だったなんて言えないよ。困ったそこをどいて。


「僕は獲物を出したいので通してもらえますか?」


「あぁすまん・・・それ君が倒したのか?」


「はい、あの・・・」


「いや、その・・・」といいながらやっとどいてくれた。


「これをお願いします」とカウンターに出すと


「血抜きをしてないのか?」


「血抜き?」


「知らないのか?それでは裏でやるから見に来い」


リルは裏で獲物の血抜きのやり方を教えてもらったが、獲物の血がまだ固まってなかったので、割といい査定をしてもらえた。


「いいか、すぐに血抜きをしたほうが肉がうまいからな」


「うん、ありがと、これからは血抜きしてくるよ」


受付で薬草と角兎の代金をもらって帰ろうとすると先ほどの男に呼び止められた。


「えーーと俺はヘンリー。君はリルでいいのか?受付でそう呼ばれていたのが耳にはいった」


「はい、リルです」


「ギガネコの報酬を分けたいと思って」


「いりません。それでは」と席を立とうとするリルに革袋を押し付けると


「遠慮せずに受け取って、で君に頼みがあるんだ」


「できません」


「いや、いや・・・・最後まで聞いてくれ。最近魔獣の様子がおかしいのだ。あのギガネコはもっと奥に住んでいるし、人が近づくと隠れるような魔獣なんだ」


「それで今度国から騎士団が派遣されて来るのだが、その騎士団を手伝う依頼が発生するんだ。それを受けてもらえないかと思って・・・・」


「うけません、僕、薬草取って暮らしてまして危ないことはいやなんです」


「今回はあんだけたくさんの強そうな人が走っていったから安心だと思ってつい見物に行ったんです。そしたらあんなに怖いことが・・・怖いことはいやです」


「そうか・・・・まぁ気長に誘うかな」


「冗談はやめて下さい。ほんとに迷惑です」リルはその場を離れた。










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