第三章

こうして、姫君と夏木によって主上という男は排されました。

 二人、重い罪を抱えながらも安寧を手にしたと。

 姫君は自由になったのだと。

 中宮たる姫君に、少将のような懸想をする男は今やおりませんでした。主上が亡きものとなっても、それが許される立場のものはいないと。

『くち閉ざし

 みをも閉ざして

 くちなしの

 かたくくちなわ

 ゆるさざりけり』

 姫君の体を奪うものを斥けて、夏木はひとまずの安心を得ました。

 しかし──。

 姫君はあまりにも美しかったのです。

 少将と、主上と、狂わせてきた美しさ。夏木もまた、そのうちの一人かもしれません。

 狂いだした歯車は今なお狂っているのです。何らかの終止符をうつまで止まらない。

 それは、何によれば止まるというのでしょうか。姫君も夏木も、歯車に巻き込まれながら生きてゆきます。

 その果てに何があるのか。


 では、最終章を始めましょう。


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