第27話 大好きな幼馴染

「風花風花風花……風花!!!」

 何ででないの、なんで電話出てくれないの?

 何でなの、なんでなのなんでなの?

 何でナンデナンデナンデ……野中といるの? あの男と一緒なの、一緒なの!?


「風花風花、風花……風花、風花、風花……ふうかぁ……」

 いやだよ、絶対嫌だよ。

 風花は私のだもん、私の風花だもん……絶対、私の、風花なんだもん。

 大好きって言ってくれたもん、風花は私の事好きって言ってくれたもん。

 全然認めてもらえなくて、バカにされて気持ち悪がられていた私の好きを、肯定してくれて、私の事認めてくれて、好きって言ってくれて……そんな事言ってくれた風花が、浮気するわけないもん、私の風花だもん! 風花と私は、互いに愛し合ってるんだもん!!!


「風花、風花、風花風花風花風花……風花、出て出て……お願い、出てよ出てよ風花風花……ふうかぁ……」



 ☆


「悠真君、大好き……風花、悠真君の事、独り占めしたい……風花、悠真君と、悠真君と……」


「俺も風花ちゃんと、風花ちゃんと……」

 ジリジリジリジリジリジリ


『!?』

 風花ちゃんと抱き合う放課後のベッドの中、とろとろふわふわして、風花ちゃんのこと以外何も考えられなくなった思考に急にけたたましいアラームが鳴り響く。


「悠真君、悠真君……風花、もう、風花……」


「……あれ? あれ?」

 これ、何の音だっけ?

 この音、どっかで聞いたことがある、この音、確か、確か……


「んちゅ、ちゅぷっ、ちゅぱっ……悠真君と、ちゅー、好き……だから、本物、早く……悠真君の、本物の、ちゅーも、悠真君も、全部欲しい……」


「……違う、違う……」

 そうだ、この音……そうだ!

 この音は、この音は……!!!


「ハァハァハァ……悠真君、悠真君……風花したい、悠真君と……悠真君の幸せ、身体中で感じたい、風花、全部で、感じたい……もう、準備完了だよ、風花は……」


「……風花ちゃん、電話来てる! 電話、来てるよ……な、難波ちゃんから! 電話来てる、出ないと! 出ないと、ダメ、でしょ!!!」

 そうだ、あの音は難波ちゃんからの電話の音。

 風花ちゃんが大事な人の連絡音にする、謎のアラーム音減の一つ……うん、思い出した、思い出した……そして、俺が大変な事をしようとしていたことも。


「電話? 電話……電話なんて、良いよ……もういいよ、そんなの……今は、悠真君と、悠真君の事……悠真君を、いっぱい感じて、それで……」


「ダメ、難波ちゃんだよ……風花ちゃんの、彼女だよ。風花ちゃんの大好きな人で、大好きな、彼女さんだよ……ほら、出てあげないと。電話、出てあげないと……電話、出なきゃダメだよ、風花ちゃん!!! 俺なんかじゃなくて、難波ちゃんの電話、出なきゃダメだよ!!!」

 何やってるんだ、俺は何やってたんだよ!

 俺は風花ちゃんに何をしようとしてた、このまま行って、それで……ダメだ、絶対ダメだ! 良かった、頭冷静になって。あのアラームで、冷静になってよかった!


 ダメだって、なんで風花ちゃんに、風花ちゃんと……ダメに決まってるだろ、こんな事!!! 絶対ダメな事、俺はしようとしてたんだぞ!!! 

 互いにちゃんと好きな人がいるんだ、風花ちゃんにも、俺にも……だから絶対ダメなんだから! そんなことするの、絶対ダメなんだから!!!


「ゆ、悠真君……今は悠真君の時間で、だから……」


「ダメ、ダメ……風花ちゃん出てあげて。電話出ないとダメ……ダメだよ、風花ちゃん……甘々時間も、いつもこれくらいで終わりでしょ?」

 やばかった、完全に流されていた。

 完全にこの空気感に、風花ちゃんの雰囲気に惑わされて、快楽にも抗えずに、それで……危なかった、もう少しで人間として大事なモノ、失う所だった。

 あのまま流されてたら色々大事なモノとか、大事な関係とか、そもそものものとか……全部全部失って、ぐちゃぐちゃの肉塊になるところだった。


 危ない危ない、俺は今の関係壊したくないし、風花ちゃんも……風花ちゃんにも、俺の幼馴染で、ずっといて欲しいから。

 だからダメ、流されちゃダメ……ダメなんだよ、風花ちゃん!


 さっきは流されそうになって、快楽に身を任せて、そのまま自分の気持ちを伝えて、そのまま風花ちゃんと危ない橋を渡りそうになったけど、ダメなんだ……ダメなんだよ、風花ちゃん。

 俺たちはそんな事しちゃダメなんだ、そんな関係になってしまったらダメなんだよ。


「ヤダ、なんでそんな事言うの……風花、悠真君と、悠真君と……」


「ダメだって、風花ちゃん……ダメダメ。俺と風花ちゃんじゃダメ……早く電話、出てあげて。難波ちゃんの電話、出てあげて」

 いくらお互いが好き同士でも、いくら大好きでも……俺たちはそう言う関係に、なっちゃいけないんだよ。


 ダメなんだって、風花ちゃん。俺たちは遅すぎたんだ。互いの気持ちに、気付くのが遅すぎたんだ……もう遅いんだよ、風花ちゃん。

 いくら大好きで、想いあっていてももう遅くて、もう間に合わないんだ……そう言う事するには俺も風花ちゃんも他の存在が大きくなり過ぎたんだよ。


「遅くない、全然遅くない……悠真君、全然遅くないよ、今からでも、間に合うよ……悠真君と、風花なら、まだ間に合う……悠真君と、風花なら、これから、もっと、幸せに……だから、風花、悠真君と……」


「ダメだって、ダメなんだって風花ちゃん……幸せになれるかもだけど、それじゃ悲しんじゃう人がいるでしょ。風花ちゃんにはいま彼女がいて、俺にも彼女がいる。その彼女、悲しませたらダメだから。自分を大好きって言ってくれる人は大事にしないと。風花ちゃんを大好きって言ってくれる難波ちゃんの事、大事にしてあげないと」


「翠ちゃんは大好き、でも……風花は、風花は……風花は悠真君の事も、大好きだもん。欲張りさんで、食いしん坊さんだから、風花は悠真君の事も大好きなんだもん……風花の事は、大事にしてくれないの? 風花も、大好きなんだよ、悠真君の事……ずっとずっと、大好きだったんだよ?」


「……そんなの、決まってるじゃん! 大事にするに決まってるじゃん! 風花ちゃんの事、俺も大好きだもん……大事にしないわけないじゃん、風花ちゃんの事!!! 大好きな風花ちゃんを大事にしないわけないじゃん!!!」


「あうっ……」

 寂しそうに、泣きそうな表情でギュッと俺の服を掴む風花ちゃんをもう一度強く抱きしめる。

 俺だって大好きだもん、大好きな風花ちゃんだもん。

 大好きだもん、俺だって。ずっとずっと大好きだもん。


「風花も、大好き……悠真君の事、大好き……だから、風花と、風花と……ふうかとぉ……なんで、なんでこうなっちゃったの……なんで、風花と、悠真君……なんでぇ……」


「ごめん、ごめん……ごめんね、風花ちゃん……ホント大好き、ずっと大好きだった……ごめんね、風花ちゃん……もっと早く伝えればよかった」

 でも遅いんだよ、もう。大好きでも、大好きになったらダメなんだよ、俺たちは。幼馴染以上の関係になっちゃ、ダメなんだよ。

 俺と風花ちゃんは、幼馴染以上の関係にはなれないんだよ、もうダメなんだよ。


「なんで、なんでぇ……風花が、ダメだったの? 風花が、もっと早く、悠真君に……風花が、風花が……」


「違う、風花ちゃんは悪くない……俺が悪いんだよ。ずっと大好きだったのに、風花ちゃんに拒否されるのが怖くて、気持ち伝えられなくて……悪いのは俺だよ。俺が悪いんだよ、風花ちゃん」


「拒否なんてしないよ、大好きだもん、結婚したいもん、悠真君の、あかちゃん欲しいもん……今なら拒否しないよ? 今なら、風花……風花、悠真君の事、絶対、受け入れるよ……悠真君の事、大好きで、ずっと一緒に……大好きな風花が、悠真君とずっと一緒に居るよ?」


「ダメだって、もう遅いから……風花ちゃんも俺も大事な人が、もういるでしょ? だから風花ちゃんは難波ちゃんの事、いっぱい大好きして、いっぱい愛してあげて……大好きって、ちゃんと言ってくれる人の事、大事にしてあげて。難波ちゃんの事を、一番に考えてあげて、ずっと一緒に居てあげて」


「……わかってる、私は。私は翠ちゃんを大事にって、わかってる……でも、風花は、悠真君と、悠真君と……ひゃう!?」

 泣きそうで、崩れてしまいそうな風花ちゃんの小さな身体を、もっともっと、ぎゅーっと強く抱きしめる。


「……でも、たまには俺のとこ、来ていいからね。俺も大好きだから、風花ちゃんの事大好きだから……だからたまには、俺のところ来てね。いつでも風花ちゃんの事、こうやって、受け入れるから……風花ちゃんの事、俺も大好きにするから」


「……悠真君、悠真君……わかった、私は翠ちゃんを大事にするね……でも、風花はたまには悠真君とこ、来る。悠真君とこうして、大好きで、幸せな時間……風花はそんな時間も、過ごしたい。悠真君とそんな時間、また過ごしたい」


「うん、そうだよ、風花ちゃん……大事にしてあげて、難波ちゃんの事」


「うん、うん、うん。大好きする、翠ちゃんを一番に大好きする……でもたまには、悠真君も、大好きする。だから風花の事も、大好きしてね、悠真君」


「わかってる、大好きするよ……大好きだもん、風花ちゃんの事」


「えへへ、やった……えへへへ、悠真君、大好き……ずっと大好きだよ、悠真君……えへへ……」


「俺もだよ、風花ちゃん……大好きだよ、風花ちゃん……ずっと仲良しで、大好きな幼馴染でいようね」


「うん、うん……悠真君は、大好きな幼馴染……大好きで一番の幼馴染……」


「うん、そう。大好きな、幼馴染なんだから」



 ★★★

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