囚われのメデューサ

 クッソ……ミスった……


 タンユは、二日酔いなのか、しこたま頭を殴られたせいなのかわからない酷い頭痛で目を覚ました。身動きができない。パイプ椅子にガムテープでグルグルに縛り付けられている。左目に頭からの血が流れ入って開けずらい。頭を振って、血を飛ばすと、動けない身体で身をよじった。

 よく見えない目で周りを確認すると、床には所々に白線でマークがあり、壁には剣や槍などが立てかけられている。トレーニングルームのようだ。地下にあるのか、どこにも窓がない。


「目が覚めたか」


 目の前に立っている人物を見て、タンユは笑い声が漏れた。


これは、これはWell...Well...Well、葬式以来ですね。副ギルドマスターのヤキムさん。ああ、今は念願叶ってギルドマスターになったんでしたっけ?」


 ヤキムは手に持った木製の棒で、タンユの頬を殴りつけた。


「部下から奥さんが協会にいたって聞いて、ピンときたよ」

 タンユは口の中の血反吐を床に吐き出した。

「悪徳金貸しが、実はホワイトナイトだったとはね」


「そりゃカッコいい二つ名をどうも。今後は使わせてもらいますよ」

 血まみれの歯を見せて笑う。


 フム、とヤキムは一つ頷く。

「まぁ今後があるかは君次第だな。取引場所は、武装許可地帯キリングフィールドにさせてもらった。ゴンザレスさんには、お一人で来るように伝えてある」

「てめぇ! 普通にここに持ってきてもらえばいいだろうが!」


 怪我をしていない万全の状態でも、事務職のゴンさんを守って、武装許可地帯を抜けるのは至難の業だ。

「それじゃあ、BKM我々の悪評が立つじゃないか」

 何を当たり前な、といった風に片眉をあげてから、ヤキムはまた木棒を振り下ろした。

 

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