第20話

夜斗は霊斗の家につくなり合鍵を使用して中に飛び込んだ

と同時に足につけたホルスターから特殊警棒を取り出し、振り出して長さを確保する



「夜斗!まじ!マジ助けて!」


「何度やれば気が済むんだ貴様らは」



木刀を振り下ろす雪菜の手首を手刀で叩き木刀を落とさせる

と同時に背後に回って警棒を首に添わせて警告する



「落ち着け雪菜」


「せん、ぱい…?あれ、私は何を…」


「何があった。浮気でもされたか?」


「俺がそんなことするわけないだろ!」


「…当たらずといえども遠からず、ですね」



雪菜は霊斗の部屋に入り、すぐに出てきた

その手に握られて潰されていたのは…



「…紳士本じゃねぇか」


「はい、これだけならよかったんですけど…」



中を開いて見せる雪菜

霊斗が小さな声で「殺せぇ…俺を殺せぇ」と呟いているが夜斗は無視した



「おー…見事にバストサイズがメロンだな」


「嫌味ですか!」


「知らねぇよ!霊斗にいえ!」


「嫌味なんですか!?」


「断じて違う!それは学生時代の負の遺産であって…ってそれ隠してたはずだろ!?」


「本棚の裏に専用の置き場がありました!」


「確信犯だな、死刑」


「許して!!」



夜斗が霊斗の部屋に入り確認すると、本棚の裏に後付で本一冊分の薄さしかない棚がつけられていた

どうやらそのために巨大な本棚を買い、キャスターを埋め込んだらしい



「隠し方が無駄に凝ってるの腹立つ」


「い、いや…それは…。けど夜斗だって持ってるだろ!?」


「は?持って…ないことはないが、多分捨てられたんじゃね?3年くらい姿を見てない」


「え?よく耐えてんなお前…」


「別に大したことじゃねぇだろ。お前の目の前には頼めばヤらせてくれる女がいる」


「その言い方なんか嫌です!」


「俺も嫌だな!」


「シメるぞテメェら」



ため息をつく夜斗。霊斗と雪菜からするとこのため息は随分久しぶりに感じた

それだけ遊びに行くことも減り、絡む機会が減ったということだろう



「こんなことで呼び出しやがって…一応こちとら新婚なんだが?」


「で、でも先輩言ってたじゃないですか。利害関係だから、って」


「利害関係で終わんなかったんだよ。残念ながら、俺は弥生を超愛してるし弥生もそうらしい」


「「急に惚気けられた!?」」


「テメェらの惚気分きっちり惚気けてやるからありがたく思え。そして俺はもう帰る、今日はまだ弥生とイチャイチャしたい」


「早く帰れリア充!」


「テメェが言うな新婚5年目!」



尚この夫婦は来週には5回目の新婚旅行に行くようだ



(ったく…。面倒な奴らだ)



それでも呼ばれれば来るあたり、夜斗も存外人に甘い



(ま、構わんがな。俺を育てたのは親というより、お前らと紗奈だ)



笑いながら拳を霊斗に突き出す夜斗

中学生時代に一時期流行っただけの儀式



「またくるぜ」


「…!ああ」



霊斗はその拳に、自分のそれを上下にぶつけて、最後に正面からぶつけ合わせた

その反動で夜斗は振り返り、手を上げて家を後にした



「…そういや家カギしてたよね?」


「先輩には合鍵渡してますよ?私が暴走した時止められるのあの人だけなので」


「マジかよ」



その会話は聞こえなかったことにした

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