③ マルス、三人のヒロインとともに旅立つ


【マルス視点】



 ちくしょう! アメリアだけでなく、ミネルバも仲間にできなかった! 村長めっ、やってくれたな! くそがっ!


 つーかそもそも、なんで村の連中がみんな生き残ってんだよ! ヤツらさえいなけりゃきっと、ミネルバに会えないなんてこともなかったはずなのによぉ! 意味が分からねぇ!


 くそっ! くそくそくそっ! くそがっ!


 ああ、ムカムカする。どうにかしてこのイライラを解消しねぇと。このままだと誰かれかまわず殴っちまいそうだ。


「なんとか穏便に発散させる方法は……って、考えるまでもねぇか」


 ヒロインを失った悲しみはヒロインに癒やしてもらうのが筋ってもんだろ。あいつらにしずめてもらえばいい。俺の溜まりに溜まった色々なもんを吐き出してスッキリさせていただこうじゃねぇか。


 くっ、くっくっくっ! 


 そうと決まれば、さっさと先へ進まねぇとな!


 やべぇ、妄想がはかどるぜ!







 ヒロインどもとのあれこれを考えている間に、俺はスライムが出現する草原を越え、長大な川を渡り、広い平原を踏破とうはした先にある鉱業都市・エルキナに到着した。


 ここで主人公は新たに三人のヒロインを仲間にできるんだ。


 金髪碧眼きんぱつへきがんのエルフに、無口で無表情なクーデレ剣士、それとムチムチボディの神官だ。


 さぁて、どいつからいただこうか? 三人とも超絶美人だから迷っちまうぜ。


 ……と、その前に。この三人のヒロインたちと協力してヴァンパイアどもを片付けなきゃなんねぇのか。


 三人とは最初、ヴァンパイアにさらわれた女どもを助けるって目的のために手を組むことになるんだ。ヴァンパイア討伐が前提の仲間入りだからな。


 え~っと、たしか連中はレッサーデーモンと同じDランクの魔物だったよな? んじゃ、さっさとレベル上げするか。それと、さっきスライムを倒して手に入れたドロップアイテムを売って、その金で装備を整えるか。


 つっても、たいしたもんは買えねぇが。薬草しかドロップしなかったからな。スライムゼリーが落ちれば一発で大金が手に入ったんだが、どれだけ倒しても出なかった。


 やっぱ、幸運値の高いアメリアがいねぇってのは痛いぜ。


 ……って、なに言ってんだ俺は! あんなヤツどうでもいいだろうが! 忘れろ!


 俺は首を左右に激しく振って、アメリアの顔を頭から追い出した。










 1か月後―――



 あれから俺はレベルアップにはげんだ。


 ひたすら都市の周辺をウロウロ歩き、魔物を倒して回った。


 手に入れたドロップアイテムを売って得た金で強力な武具を買い、それらを装備してさらに魔物を倒しまくった。


「くらえ!」


 ズバッ


「グギャアアア!」




≪ジャイアントバットを倒しました≫

≪レベルが上がりました≫

≪HPが1アップしました≫

≪TPが1アップしました≫

≪MPが1アップしました≫

≪守備力が1アップしました≫

≪魔防が1アップしました≫

≪素早さが1アップしました≫

≪HPが全快しました≫




※ ※ ※



マルス

クラス:ブレイブ

種 族:ヒューマン

レベル:20 ←【UP】

H P:38/38 ←【UP】

T P:33/33 ←【UP】

M P:29/29 ←【UP】

攻撃力:34

守備力:39 ←【UP】

魔 攻:27 

魔 防:28 ←【UP】

素早さ:31 ←【UP】

幸 運:15


装 備:銀の剣

    銀の鎧

    銀の兜

    銀の盾

    コンバットブーツ


 技 :『スラッシュ』(消費TP:0)

   →敵単体に攻撃力✕1.0の物理ダメージ

    『横一文字』(消費TP:3)

   →射程範囲内の敵全体に攻撃力✕1.0の

    物理ダメージ

    『縦一文字』(消費TP:3)

   →敵単体に攻撃力✕1.2の物理ダメージ

    『烈風斬』(消費TP:5)

   →敵単体に攻撃力✕1.5の物理ダメージ

    『薙ぎ払い』(消費TP:5)

   →射程範囲内の敵全体に攻撃力✕1.2の

    物理ダメージ

    『Xスラッシュ』(消費TP:8)

   →敵単体に攻撃力✕1.8の物理ダメージ

    『疾突』(消費TP:8)

   →敵単体に攻撃力✕1.5の物理ダメージ

   →必中

    『蒼嵐旋斬』(消費TP:8)

   →射程範囲内の敵全体に攻撃力✕1.5の

    物理ダメージ

    『Δデルタスラッシュ』(消費TP:10)

   →敵単体に攻撃力✕2.0の物理ダメージ


魔 法:『ファイア』(消費MP:3)

   →敵単体に魔攻✕1.2の火属性ダメージ

    『エルファイア』(消費MP:5)

   →敵単体に魔攻✕1.5の火属性ダメージ

    『ウィンド』(消費MP:3)

   →敵単体に魔攻✕1.2の風属性ダメージ

    『エルウィンド』(消費MP:5)

   →敵単体に魔攻✕1.5の風属性ダメージ

    『フロスト』(消費MP:3)

   →敵単体に魔攻✕1.2の氷属性ダメージ

    『エルフロスト』(消費MP:5)

   →敵単体に魔攻✕1.5の氷属性ダメージ

    『サンダー』(消費MP:3)

   →敵単体に魔攻✕1.2の雷属性ダメージ

    『エルサンダー』(消費MP:5)

   →敵単体に魔攻✕1.5の雷属性ダメージ

    『レイ』(消費MP:3)

   →敵単体に魔攻✕1.2の光属性ダメージ

    『エルレイ』(消費MP:5)

   →敵単体に魔攻✕1.5の光属性ダメージ

    『ヒール』(消費MP:3)

   →自身か仲間単体のHPを20回復

    『ブースト』(消費MP:3)

   →自身か仲間単体の攻撃力を1.2倍

   →効果時間:300秒

    『プロテクト』(消費MP:3)

   →自身か仲間単体の守備力を1.2倍

   →効果時間:300秒

    『アクセル』(消費MP:3)

   →自身か仲間単体の素早さを1.2倍

   →効果時間:300秒



※ ※ ※



「っと、こんなもんでいいか」


 レベルが一つ上がり、そろそろ切りのいいところだと思い、立ち止まる。


「Dランクの魔物が相手なら、主人公のレベルが20もありゃ楽勝だもんな」


 しっかし、キツかったな。ここまでレベルを上げんのに1か月もかかっちまった。


 主人公は、幸運以外の能力値は上がりやすいし、技や魔法をバランスよく覚えられるが、代わりにレベルが上がりにくいんだよな。


 おまけにゲームと違って、魔物を探してマップ上を歩き回るのにかなり時間がかかったしよぉ。索敵能力が優れたアメリアがいないせいだぜ。けっ。


 おかげで、デカくて見つけやすい【ジャイアントバット】ばかり倒す羽目はめになったしな。はぁ〜、だるい作業だったぜ。


 だが、これでようやく準備は整った。あの三人を迎えに行くとするか。







 その後、俺は原作通り防具屋でエルフを、酒場で剣士を、教会で神官を仲間にした。


 やっぱり、リアルになっても美人だぜ。ゲーム画面越しに見てたときよりずっとな。


 まず、エルフの【シエラ】。


 エルフってのは長命で耳の長い種族だ。金を溶かしたような黄金色の長髪に緑色の瞳。目と同じ色の貫頭衣かんとういを着ているが、だいぶ露出度が高くて、いっそ裸の方がエロくないんじゃねぇかと思うほどだ。


 胸が小さいのは残念だが、それがいいっていう貧乳好きからは絶大な支持を得ている。かなり気の強い性格のジャジャ馬だが、好感度が高くなるにつれて従順になってくる。その変化をじかに味わうのが今から楽しみだ。


 次に、剣士の【リン】。


 種族はヒューマンで、元の世界でいう武士っぽい風貌ふうぼうの少女だ。腰まで伸ばしたつややかな黒髪をヒモでって、うなじのあたりで束ねている。腰にいているのは剣ではなく刀だ。東の海を渡ってきたって設定だったから、こいつの容姿は戦国時代の武将をモデルにしたんだろ。


 無口な上に無表情なんで、なに考えてるかさっぱり分からんが、そのミステリアスさが魅力だ。だが、好感度が高くなるにつれて口数が増え、表情豊かになっていくらしい。主人公にデレデレになると子猫みたいに甘えてくるようになるんだとよ。くっくっくっ、最高じゃあねぇか。


 最後に、神官の【オフィーリア】


 こいつも種族はヒューマンだ。肩口でそろえられた青色の髪に、薄い紫色の瞳。肌触りの良さそうな白色の僧衣は肩からくるぶしまですっぽり覆っているため露出度こそ少ないが、体つきがムチムチだからボディラインが強調されていて非常にそそられる。


 理知的だが性格は温和で、ものすごいバブみがある。仕事に忙殺されて疲れ切った多くの社会人男性たちをオギャらせたことは言うまでもねぇ。俺様も早く、その豊満な胸に包まれてオギャりたいぜ。


 ヒロインどもに対してそんなことを考えながら、俺は三人を引きつれてヴァンパイア討伐に向けて旅立った。







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