第18話 「轟く咆哮」
ガサッ。
あ、黒モフかな……
そろそろ来ても可笑しくはないよね。
戦闘体制しとかないと不味いかな。
「……ザクロ……」
だが、予想を裏切り茂みにから現れたのはどことなくくたびれた様子のクロウだった。
なんとか追い付いたんだな。
って、なんか雰囲気が怪しいですけど気のせい?
「あぁ、なんだクロウか……って痛い!え?出会い頭にアンクロとかヒドくないッ?」
「……今度脱走したら位置探索付きの魔導首輪つけるっていいませんでした?……そんなに首輪着けたいですか?」
ヒッ!
ゾワリと背中に悪寒がはしる。
なんかブラッククロウが降臨していらっしやる。
首元に触れる手が怖いので退けてくれないかなぁ。
「え?今回のは流石にノーカンじゃない!?……白モフもそう思うよね……ね?」
『……儂は何も聞こえんな』
ぐっ、裏切り者!
せめて視線ぐらい合わせてくれてもいいじゃん。
この状態のクロウは面倒くさいんだよ……
「クロウさんリーダーいました?……ってリーダーじゃん」
「あら、見つかったのね良かったわ。……シバくぞ」
「ツクヨミ表情と言葉が一致してないでごさるよ」
えー……なんかツクヨミさんまでブラック。
俺は何も……してなくはないですけどね。
なんか、心配かけてすいません。
『我を忘れてはいないか?』
「『あっ……居たんだ』」
この黒モフ気配が薄いから、イマイチ索敵しにくいんだよな。
転移陣使えるくらいだから、何かしらのスキルだと思うけど。
「黒モフだか、黒ポメだか知りませんが邪魔しないでくれますか?今物凄く忙しいんで」
ギラっと鋭い眼光で睨まれた黒モフ。
流石に怖かったのか、石みたいに固まり何も言わなくなった。
ブルブル震えてて可哀想……クロウ怖いよね、分かるよ。
もうクロウさんの勝ちでよくない?
戦意喪失してそうだし戦う必要ない気がするのは俺だけだろうか。
「クロウさん、ちょい落ち着こうか~」
「そうよ、リーダーなら土下座の1つや2つしてくれるわよ!」
「そうでござるよ。位置探索付きの魔導首輪も着けてくれるでござる」
「……え?」
ここぞとばかりの連携プレーはなんなのだろう。
息ピッタリ過ぎない?
実は打ち合わせしましたとかじゃないの?
……皆して……
『小僧……その、なんだ、元気だすのじゃ…』
「っ……。《
ただ静かに呟く。
多分きこえたのは白モフぐらいだろうな。
だがそんな事関係ない。
竜巻の如く自身の周りにある風の障壁がドゴォンッ!!と暴発する。
『鷹?……もしや、ガーネットホーク?』
額に輝く朱い巨石―
鋭い鍵足、羽を広げ悠然と羽ばたく姿は絵画の1枚のような神々しさがある。
空中の覇者たるその鷹は大きく息を吸い込んだ。
「ヤバッ!リーダーその攻撃は……っ!?ストップッ!」
「あら、キャパシティ越えちゃったのかしらね~?」
ヨウスケが止めに入るが多分間に合わないだろう。
一拍置いて、地を揺るがす咆哮が轟き渡る。
ビリビリと鼓膜を震わせる騒音。
止める者が誰もいないのでザクロは2発目の咆哮の溜めに入る。
「あー、キーンってするっ!」
「……耳栓仕込んどいて良かったでござる」
「ズルい!ワタシにも貸してくれてもいいのよ?てか貸せっ」
耳栓の奪いあいをするツクヨミとサカイを横目に、クロウと白モフは目の前にあるモノの処理に困っていた。
「黒モフは勝手にくたばりましたね」
『倒したのかこれ?……え、勝ったのかの?』
クロウの精神的攻撃&ザクロの咆哮で目を回し完全にノックアウトしている黒モフ。
余りにも呆気ない勝利にポカンとして空いた口が塞がらない。
『小僧を止めなくていいのか?あのままは流石に不味いのではないか?』
「気がすんだら戻るから大丈夫ですよ。さて、公式に黒モフの回収を頼みますか」
そう言い暴れまくるザクロを無視して、後片付けをし始めた。
「グスッ……」
数十分程暴れて気がすんだ俺は白モフを抱え地面に座り込んでいた。
「いや~毎度の事ながらすいませんっス、黒モ……ゴホン!ラスボスは此方が預かるッス」
クロウの連絡により駆けつけた公式が、未だに気絶中の黒モフを回収している。
「白モフは回収しなくていいでござるか?」
「あぁ、そっちの子は仮テイム状態になっているから、回収はしないッス。名前をつけて大事にしてやってくださいね」
少し照れくさそうな白モフ。
実は名前はもう決めてあるんだ!
「これから宜しくな!“わたあめ”!!」
『…………』
ブフォと吹き出す音が聞こえたが気のせいだろう。
これにて一件落着です!
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