第16話 「魔人セカvsツクヨミ&サカイ(サカイ視点)」



どうやらクロウ殿とヨウスケ殿は魔人を倒せたみたいでござるな。


某達も、目の前の魔人をさっさと倒さねばなるまい。



『……兄様っ?!貴様等良くもっ!許さないッッ!!クたばれッ!』

目の前で兄を倒され、怒り狂うメイド服の魔人。

ブワリと魔力が膨れ上がった。

なに降りかまっていられないのは分かるが、あれでは直ぐに魔力切れをおこすだろう。

勝手に自滅してくれるのはありがたいが、ここは地下。

制御不能の魔力で暴れまくると、崩落しかねないのは厄介だ。



「あらあら、威勢が良いわね。そう言うの大好きよ……倒しがいがある」

いつもの人当たりのいい笑みではなく嘲笑う笑顔。

俺はわざとらしくため息をついた。


「ツクヨミ、素が出てるでござるよ」

「いいじゃない、リーダーいないし。私あの子好きになれそうにないのよね」

「……猫かぶりめ…」

「聞こえてますけどぉ!?サカイ君の方が猫かぶりじゃないっ!ワタシはまだマシよっ」

グワッ!と此方を振り替えるツクヨミ。

小声で言ったのに良く分かったな。

……猫かぶりなのはお互い様な気がするが、水掛け論になりそうだから止めとく。



『随分余裕かましてるな、本気でかかって来ないと私は勝てないぞ!』

「ハァ?本気になる必要ないわよ。だって貴方私より弱いじゃない」

何言ってんだコイツと歪んだ表情になる。

気持ちは分かるが落ち着け。


『な、なんだと……っ!私より強い!?ふざけるなっ!!私は…私はお前より強いっ!!』


冷静さを欠いてる獲物程好きが生まれやすい。

ここで俺が攻撃したら、まず間違いなく避けきれないだろうな。

さっさと仕留めるのも悪くはない。



―だが魔人よりも止めるべきは……


バチンッ!!

「ヘブしっ!……イッテェ、なにしやがるクソサカイっ!」

懐から取り出したハリセンで思いっきりぶっ叩く。

力を込めすぎたせいかバシッと軽い音ではない重低音が響いた。

口が悪いのは気にしないでおく。

だが後で覚えてろよ、きっちりシメてやるからな。


「お前は下がっていろ、戦闘の邪魔だ。俺1人で片付ける」

「……チッ。勝手にしろ」

頭を乱暴にガシカシと掻き、一歩後ろに下がる。

普段から手入れの行き届いた金髪の髪がボサボサになってしまってる。

髪が一房垂れていて表情を隠しているが、怒りで歪んでいるのだろう。

まったく、戦闘が終わるまで直しておけよ……そんな顔じゃリーダーに会えないだろ。



『誰が相手でも捻り潰すまでだ、泣いて許しを乞うても止めはしないっ!ウォーターソードっ!』


「君には悪いが直ぐに終わらせるよ。《変幻フォーゼ》解放……」


魔人の攻撃は俺に当たる前にツクヨミの張った結界に遮られた。

機嫌は直ったのだろうか?



フワリ。

静かに霧が立ち込め、己の形を変えていく。

霧が身体を包みこむ中、体の中央から魔力が溢れてくるのが分かる。

辺りの霧がフッと霧散した。


―姿を現したのは一匹の魔物。

紫の毒々しい鱗、とぐろを巻いてるから正確には分からないが、ゆうに3メートルはあるだろう巨体。


『……蠱毒の蛇王ポイズン・スネークキング……』



巨体は音もなく獲物に忍びよる。

先の割れた舌を覗かせ、ガバリと口を開けた。


動く事すら無駄だと思わせる魔力圧。

魔人はなすすべなくゆっくりと呑み込まれていく。


ゴクリ。

「クソ不味い……」

サカイは蛇の姿から人へと戻るとケホッと咳き込む。

美味しい鍋を食べたばかりなのに、何でこんな不味いの喰わないといけないんだ。

あぁ、リーダーの手料理で口直ししたい。


「いつ見てもエゲツない殺し方だよな……マジ無理」

「うっさい黙れ。最速で倒したんだから文句言うなよ」

後が大変だけど最短で倒すならあれが1番早い。



「ツクヨミさん、サカイさんご苦労様です」

「鍵発見しました~多分これが中央エリアに行けるアイテムです」

ヨウスケ殿の手には銀色のアンティーク風な鍵がある。

魔人のどちらかが鍵を持ってたって事か……

「これで、リーダーを迎えに行けるでござるな」

「ですね、行きましょうか」

歩き出すクロウ殿。

その後ろを皆で着いて行く。



「切り替え早っ、どんだけ猫かぶってんだよ」

「演じるのは慣れてるからな」

俺は隣で愚痴るツクヨミに静かに微笑んだ。



だが、先程から気になっている事が1つある。

「中央エリアの行き方はこれであっているのでござるか?」



「「「……あっ……」」」


どうやらリーダーの元にいくのはもう少しかかりそうだ。




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