第50話 衝突

「なっ!さらわれたのではないのですか!?」


 皆が驚くなか碧玉へきぎょくがそういう。


「ワシは水の霊獣仙人だからの、体を自在に変化できる。

 だから、さらわれる前に切り離された一部に戻ったのじゃよ。

 戻るのは大変じゃったがな」


 と事も無げにいう。


「一部、私が切った場所か!」


「うむ、しかし先ほどの話聞かせてもらったが、

 もはや間に合わぬよ。

 冥洞めいどうには多くの仙人が集まっておったからの」


「やはり......元々用意していましたか」


 命炎仙みょうえんせんは考える。


「うむ、ワシも体しか取り戻せなんだ。

 封戒玉ふうかいぎょくは奪われてしもうた」


「こちらも仙人が必要ということですね」


「そうなりますが......」 


 僕の問い命炎仙みょうえんせんが口ごもる。


「考えても仕方ない。

 桃理とうりも取り戻さないとならないし、

 封印も守るしかない」


 こうがそういうと、蒼花仙そうかせんはうなづく。


「向こうで強いのは、

 十二大仙の冥影仙めいえいせんだけだ。

 こちらには命炎仙みょうえんせん

 龍漿仙りゅうしょうせん

 冴氷仙ごひょうせんがいる。充分戦える」 


「私もいます」


 そういって未麗仙みれいせん先生が、

 多くの仙人と共に降りてきた。


「......これで戦力的には優位ですね。しかし、何か気にかかる」


「何がですか命炎仙みょうえんせん


 僕が聞く。


「私もです」


 未麗仙みれいせん先生も少し考えたように答える。


「こうなることは冥影仙めいえんいせんも、

 ある程度予測していたはずなのに......」


「だからこそ人質をとったのでは?」


 碧玉へきぎょくの問いに、

 冴氷仙ごひょうせんがうなづいた。


「しかし、やはり何か罠を仕掛けているのと考えるべきだな」


「確かにの、まあワシは行かぬよ。

 えにしもない戦いは好まぬゆえな」


 龍漿仙りゅうしょうせんが答える。


「なっ!じいさん。あんたが加わってくれないと、困るぜ」


「こらこう!十二大仙になんという口を!」


 蒼花仙そうかせんこうにいうと、

 龍漿仙りゅうしょうせんはこたえる。


「それにの、おそらく陰の気をためるために、

 この戦争を利するつもりなのじゃろうて、

 このまま総力戦となれば、陰の気がたまるのは必定」


「それで復活した玄陽仙げんようせんと、

 仙境大乱を再び起こそうとしている......

 だが、あなたたちが行かずとも、

 この刀を狙っていようと私は行かねばならない」


 灰混仙かいこんせんは刀の柄を強く握る。


「そうだね。僕も桃理とうりは助けたい。行くしかない」


 僕が懐から水如杖すいにょじょうを取り出すと、

 龍漿仙りゅうしょうせんは驚く。


「お主、ワシがつくった水如杖すいにょじょうを、

 持っておるのか」


「えっ?これ、

 龍漿仙りゅうしょうせんのものだったんですか」


 僕は公尚こうしょうさんのことを話した。


「......なるほど、あの者の子孫も生きておったか、

 それにしても、これほどの年月をえてまた関わるとは......」


「そうですね。えんとは不思議なものです」


 僕がいうと、龍漿仙りゅうしょうせんはうなづいた。


「ふむ、昇天したものにワシの杖が......そしてここに、

 これもえにしか......よかろう、

 ワシもこの戦に関わるとしようか」


「これで戦う準備はできましたね!」


 碧玉へきぎょくが笑顔で言った。


「そうですね......てすが、さっきいったように、

 何かあるのは間違いありません。

 そこで、私たちは集まった仙人たちを何とかしますから、

 あなたたちは龍漿仙りゅうしょうせんと共に、

 冥影仙めいえいせんを討ちなさい」

 

 そう命炎仙みょうえんせんがいう。


「よかろう。ワシならば彼らに気取られることなく、

 奥につれていけよう」


 そういうと、水がものすごい勢いで、

 龍漿仙りゅうしょうせんに集まり、全てなくなると、

 龍漿仙りゅうしょうせんは透けた龍へと変じていた。


(僕が最初に来たときみた!あの龍か!)


「お主たちのるがよい。

 冥影仙めいえいせんまで、連れていくぞい」


 僕とこう蒼花仙そうかせん碧玉へきぎょく灰混仙かいこんせんを乗せて、

 龍となった龍漿仙りゅうしょうせんは仙島を飛び立った。

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