第43話 湖面での戦い

「お、おい!本当にここか三咲みさき!......」

 

 こうが大声で叫ぶ。


「多分!......ぐっ寒い」  


 僕たちは冴氷仙ごひょうせん封宝具ふうほうぐを、

 探しに凍った湖に来ていた。気で空気を操れる僕らだったが、

 ここの寒さは洞窟のそれを上回り、極寒となっていた。


「信じられねえ寒さだ!気を操ってるのに、凍りつきそうだ!」


「ああ、多分、封宝具ふうほうぐの力なんだろう。

 早く探さないと、僕らが死んでしまう!」


「きゅい!!」


 懐のコマリがないた。


「あれ!!」


 よく感じてみると、湖の中心に気を感じる。

 近づいてみると、

 湖の中心に白い棒のような物がささっていた。


「あれか!!」


 僕たちが近づくと、空から大きな気の反応がする。


「危ない!!」


 僕がこうに飛び付くと、衝撃があり湖の表面が割れる。

 上を見ると空に浮かぶ人間がいた。


「仙人か!?」


「貴様らは何者だ!気を感じついてきてみれば、

 ここにある封宝具ふうほうぐ狙っているのか」


 長身の男はそういった。


「お前こそ何者だ!俺たちは冴氷仙ごひょうせんから、

 これを持ってくるように言われた!邪魔をするな!

 まさか!!沙像仙さぞうせんか!」


 こうがそういうと、男は驚いている。


冴氷仙ごひょうせんが......目覚めていたのか......

 ならば余計にそれを渡すわけにはいかない!

 我が師、沙像仙さぞうせんの妨害をされては困る。

 行け!影残環えいざんかん!!」


 男が腕を降ると腕につけていた小さな輪っかがはずれ、

 ビュンビュンと音を出して、こちらに高速で迫る。


金漿棍きんしょうこん!!」


 こうが棍を地面に指すと、

 金属の液体が波のようになり輪っかを飲み込む。


「なめるなよ!!お前のちっせえ輪なんて効くかよ!」


 波の金属から音が聞こえる。


「だめだこう水如杖すいにょじょう!!」


 金属から回転して輪っかが飛んできた。

 水如杖すいにょじょうで輪っかをとらえ弾く。


「すまん三咲みさき!あそこまで回転力があるとは」


「回転だけではないわ!」


 戻っていった輪がいくつもに増えて戻って飛んできた。


「なっ!増えた!!うわああ!!」


「防げねえ!ぐあああ!!」


 僕たちはどんどん増えて飛んでくる輪を、

 防ぎきれずに吹き飛ばされる。 


「その封宝具ふうほうぐで致命傷は避けたか......

 なかなか、いい封宝具ふうほうぐを持っているな。

 ついでにもらってやろう」 


 男はそういって笑う。


「くっ!何だ!あの輪どんどん増えやがる!!」


「ああ、幻じゃない全て実体だ!増える金属の輪だ!」


 大量に飛び更に増える輪に追い詰められる。


「くそ!!金漿棍きんしょうこん!!」


 地面から牙のような金属は無数に分かれ空の男を襲う。


「ふん!届くか!」


 その金属は輪っかによって両断された。


「!?」


「くそ!!やっぱ届かねえ!」


(いま、いくつか輪が消えなかったか......)


「......水如杖《すいにょじょう!!」


 僕は同じ様に気を牙のように突き立て空の男を狙う。


「無駄だ!!」  


 また輪によって突き立てた気を両断された。

 そして輪は僕たちを襲う。

 

(やはり!!)


「防戦一方だ!あの輪がある限り、空に攻撃ができねえ!

 どうする一旦引くか、それとも隙をついて、

 あの棒だけ何とかして、手に入れるか」

 

 こうが必死に輪をはじきながらいった。


「いや!紅!金漿棍きんしょうこんで、

 さっきみたいに攻撃してくれ!」


「いや、届かないぞ!」 


「違う湖面全体を攻撃してくれ!!」

  

「湖面を!?なんで!」


「頼む!」 


 そういうと僕は印障いんしょうで空にあがる。


「なっ!なんかわからんが、わかった!!

 金漿棍きんしょうこん!!」


「同時に攻撃すれば通るとでも!

 空にあがっても無駄だ!叩き落としてやる!」


 そう言って男は空に無数の輪を戻す。


 こうが操った地面から出た牙のような金属は、

 上に行ったあと分かれ、下に向かうと凍った湖面を砕いた。

 そのとき、空にあった無数の輪の数が減っていく。

 

「なっ!湖面を!?くそ!!」


「術は使わせない!!」 


 男は何か術を使おうとしたが、空に飛んだ僕は、

 水如杖すいにょじょうで男を殴り地面に落とした。


「ぐはっ!!くそ!!この程度で、ぐおっ!!」


「やっと届いたぜ」


 男は立ち上がろうとしたが、

 こう金漿棍きんしょうこんで殴られ気絶した。


「ふぅ、なんとか倒せた......」


「ああ、でもなんだ湖面を砕いたら輪が減ったぞ」


「この影残環えいざんかんは影が実体化するんだ」


 そう言って僕は男の持っていた輪を手に取る。


「そうか!それで湖面に写った影の分増えてたってことか!」


「ああ、それをこうか映る湖面を砕いたから、

 影が無くなって輪もなくなった」


 なるほどと、こうはうなづく。


「早くあの封宝具ふうほうぐを持って帰ろう」


「ああ」


 こうは湖面に刺さっている白い棒を抜く。


「これ棒じゃないな鞭だ!」  


 それは二又の真っ白な鞭だった。


「よし帰ろう!」


 僕たちは倒した仙人を担ぎ、鞭を持って洞窟へと帰った。

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