深海の魔(140字小説・2)

罪に堕ちる深海。

王子に焦がれ泡沫うたかたに還ろうとした人魚を捕まえた。

広がる髪の波打つ海に沈む。

透き通る白魚の指を捕らえ、紅く色づく珊瑚の唇に触れる。

冷たい水のような貴女の青白い肌に私の熱が移る頃、真珠の如き随喜ずいきの涙が溶け落ちる。


今は憂いのすべてを忘れ、どうかこの私に溺れてはくれまいか。

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