Chapter 5-5

 音はどんどんこちらへ近付いて来る。これは間違いなくプロペラだ。ヘリコプターか。

 ヘリは邸の上空に停まった。吹き付けて来る風が庭の草木を揺らす。っていうか今日は寒いんだってば!

 と文句を言いたくなるのを抑えていると、ヘリから伸ばされたタラップから、誰かが降りて来る。あのメイド服、もしかして……。


 バリーン!!


 メイド服の人は、二階の窓を割りながら邸内に飛び込んだ。うわぁ、B級っぽい。


「茅さん!」


 やっぱりかー! 三峰の声に、僕は今のメイド服の人が誰かを悟る。


「死にたくなければ大人しくしてください。そちらの方は慎之介様の大切なご学友です。返して頂きます」

「ぐ、ぐぬぬ……!」


 三峰一人で大丈夫そうなのに、意味あるのかな。僕はそっと中を覗いてみる。

 そこは吹き抜けのロビーになっていた。扉の近くに三峰が。階段の麓に、誘拐犯と宇佐美先輩が。そして二階の廊下に茅さんがいた。

 皆の視線は茅さんに向けられている。僕が入って行くなら今しかないかな。


 僕はいそいそと邸内に侵入する。誘拐犯にも気付かれていない。意味ないかもしれないと思ったけど、ナイスプレーだよ、茅さん。

 ロビーの壁伝いに、誘拐犯に近付いていく。こんな大回りなのは、気付かれずに後ろを取りたいからだ。にしても結構綺麗にされてるなぁ。蜘蛛の巣とかいっぱい張ってそうなイメージあったけど。


「ちっ! こうなりゃままよ!」


 と、誘拐犯はナイフを振り上げた。あ、こいつヤケになったな!


「いい加減にしなさい、っと!」


 誘拐犯の後ろから、僕はナイフを持つ腕を掴んで止めた。そのまま宇佐美先輩を引き剥がし、誘拐犯を組み伏せる。流石は僕。一連の流れに淀みがないね。


「……冴木君」

「お待たせしました、宇佐美先輩。お怪我はありませんか?」


 と、僕が訊ねた時。

 突然、邸内の電灯が点いていった。

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