Chapter 5-3
「ここは……」
「有名なお化け屋敷、だね……」
ワゴン車を、撒かれるか撒かれないかというギリギリのラインで追いかけてきて、僕たちが辿り着いたのは小高い丘の上にある洋館だった。
生えっぱなしの植物で覆われたここは、当然ながら既に誰も住んでいない。この辺りではお化け屋敷として有名なスポットである。何故か霧も濃い。誘拐犯が隠れるにはおあつらえ向き、と言った所か。
門前から中を覗く。特に見張りの類はいないらしい。宇佐美先輩を三峰と間違えたらしい事といい、あまり頭のいい連中ではなさそうだ。
「よし、行くぞ慎之介」
「って、正面からかい?」
「それ以外にあるか?」
二階立ての洋館は、門の先に玄関がある以外には入れそうな所はない。裏口があるのかもしれないが、どちらにしろそんなに大きい建物でもないし、バレずに侵入するのは難しそうだ。
強いて言うなら……。
「二階のベランダから、とか」
「忍者か何かじゃあるまいし、格好だけ付けてどうする。B級映画の見過ぎだ」
好きなんだけどなぁ。分からないかなぁ、こういうの。
なんて顔をしていると、三峰にジト目を返されてしまった。
「格好付けに来たんじゃなく、人を助けに来たんだぞ。私は行くからな」
と、三峰は門を開けてさっさと中に入ってしまう。この肝の据わり具合がなんとも頼もしいね、うん。
玄関まで辿り着くと、僕も三峰も息を潜める。僕は小声で三峰に問う。
「それで、どうするんだい?」
「私が犯人たちの相手をする。その間に君は隙を突いて宇佐美先輩を助け出すんだ」
大雑把だけど、それしかなさそうだ。僕は頷いて、玄関扉の陰に隠れる。
三峰は思い切り玄関扉を開け放った。
「出て来い誘拐犯ども! 人質を返して貰いに来た!」
この声に、ドタバタと邸の中で動き回る音が聞こえた。
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