Chapter5 バレてしまっては仕方ないな
Chapter 5-1
宇佐美先輩の告白を受け、僕は動揺から答えあぐねていた。
だがそれが、予想だにしない最悪の結果を招いてしまった。
ガサッ!!
茂みの揺れる音に驚き、そちらを見やる。だがもう遅かった。
「……きゃ――!?」
茂みの中から覆面の集団が姿を現す。奴らは、僕が音に反応した時には既に宇佐美先輩の目前まで迫っており、彼女を捕らえてそのまま逃げて行く。
「せ、先輩!!」
あまりの急展開に身体が付いて行かず、驚きの声を上げる事しかできなかった。
唖然とする中、また一人、今度は僕の後方から人が駆け寄って来る。
「慎之介様!」
茅さんだ。いつも通りのメイド服姿ながら、とてつもないスピードで駆け付けた彼女は、息吐く間もなく僕の安否を訊ねてくる。
「お怪我はありませんか!?」
「僕は大丈夫、だけど……! 先輩が……! 宇佐美先輩が!!」
「落ち着いて下さい、慎之介様。ご学友の方は必ず我々がお助け致します」
「いや、でも、そんな……! そ、そうだ、警察に――」
「いけません。冴木家の人間が国家権力に頼るなどあってはならない事です。これが世間に公表されれば、冴木の家にとっても、ご学友の方にとっても不利益になります」
そんな無茶苦茶な設定ありますか!?
と、ともかく。確かに、誘拐事件が取り沙汰されて、しかも他の家の人まで巻き込んだと知れ渡ったら、家の――引いては企業の評判が果たしてどうなるかは分からない。
それでも警察を頼らないのは無謀としか言いようがないと思うが、家の方針としてそうだというなら。
「ここはお任せ下さい。慎之介様は速やかにご帰宅をお願いします」
「そうだ……ねっ!!」
「慎之介様!!」
僕は覆面たちの逃げて行った方角へ駆け出した。茅さんが制止の声を掛けて来たが、止まりはしない。
大人しく帰る事なんてできるか。僕が宇佐美先輩を助けてみせる。
公園を出ると、黒いワゴン車が猛スピードで僕の前を横切った。あいつらか。
更に、その後を追うかのように一台のバイクが現れ、僕の前に停まった。
フルフェイスのバイザーが開く。乗っていたのは、ライダースーツに身を包んだ三峰だった。
「慎之介、乗れ!」
「三峰!? どうしてここに!?」
「いいから早く!」
三峰が投げ渡してきたメットをキャッチし、僕はそれをかぶりながら彼女の後ろに跨った。
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