Chapter 1-2

 そんなこんなで我らが二年A組は、男子バスケの部と女子バレーの部で優勝を飾った。


 大会の興奮冷めやらぬままホームルームが終わると、祝勝会と称して缶ジュースで乾杯が始まる。


 クラスメイトたちに囲まれ、輪の中心にいるのは歩と、もう一人。

 女子バレーの部、決勝戦で最後の一点を決めた少女、一之瀬伊月いちのせ いつき君である。


 歩も一之瀬君も容姿は平凡、性格もいたって普通なのだが、これが何故だかモテる。生まれも育ちも平凡、外見も中身も平凡な彼らがどうして僕より目立つのか、謎は尽きない。


「最後の一点、アシストしたのは僕、冴木慎之介――」


 ざっ。


「いやあ、最後、歩に出した僕のパス、見てくれたかなー」


 ざっ。


「歩と交わしたアイコンタクトが上手く嵌ってねー」

「冴木ちょっとウザいよー」


 ……ぐすん。


「赤西とのコンビプレーで優勝を掴んだんだろう? やるじゃないか」


 教室の隅でいじける僕の元へ、一人のクラスメイトがやって来る。


「けれど、それをアピールして回るのはよくないな。あれでは正当に評価されなくても仕方があるまい」


 ぐぬぬ。


 言いたい放題言ってくれる彼女は、三峰真綾みつみね まあや。通りすがる男の10人中10人が振り返るであろう美貌を持ち、老舗旅館の一人娘として生まれた彼女は、どういう訳か親同士が決めた僕の許嫁であった。


 ま、許嫁であることは周りのみんなには秘密だけれどね。

 なぜかって? そりゃあ――。


「三峰の方こそどうなんだい? 君の上げたトスで一之瀬君が決勝点を決めたんだろう?」

「別に。ただそれだけの事だろう。自慢する必要はないさ」


 ふふっ、と笑みを浮かべるその表情は、君とは違うとでも言っているかのようで、僕は思わず目を背けてしまう。


 はっきり言おう。

 秘密にしている理由。それは。

 彼女の事が、嫌いだからさ。

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