第7話

上に向かっていると、また囚人が居た

そいつは何処から持ってきたのか分からないナイフを構える、戦う気まんまんである


「【死角化バットアングル】」


奴の異能が発動したその瞬間

奴の姿が、音が、奴を示す全てが消え失せる


マズい、あいつはナイフを持っていた

このままじゃ確実に殺される


俺は死を覚悟して、影は俺の意志とは関係なく俺を守るように動いた


「どういう事だ…!?」


遠くで姿を現した奴が驚いたように呟く

さっきの影は攻撃を防いでいたらしい


「御剣!黒羽!相手が見えるか!?」


とりあえず異能に掛かったのが俺だけなのを期待して御剣達が見えているかを確認するが…


「見えてないでござる!」

「見えない」


二人とも見えてない、つまりあの影は黒羽の異能でもないらしい


囚人は掻き消え、俺を、黒羽達を狙うが、影のお陰なのか俺達が死ぬ事は無かった


囚人は所々で見えるがそれも数秒だけ、それに攻撃の瞬間は毎回消えてから攻撃してくる


だが相変わらず影は攻撃を防ぎ続けてくれる

影獣の効果なのだろうか…?


囚人が現れ…また消える

最初こそ訳が分からなかったが冷静になれば対処法は思い付く


あいつは消えてから影が反応するまでタイムラグがある、つまり高速移動する異能ではない


それなら、無差別に広範囲攻撃を放てば良いのだ

そして無差別広範囲攻撃をしていた先達は既に居る


空気銃撃エアガン】の囚人だ、あいつはばら撒くように連射していた、その方法なら攻撃範囲は十分

そして威力は言わずもがなである


俺はそんな【空気銃撃エアガン】の空気のマシンガンを作る


そして奴が姿を表した瞬間、その方向を狙ってそれを乱射すれば…無事に穴だらけの死体が現れる


そして穴だらけの死体を御剣達に見せるのはあんまりよろしくないので…


「【死角化バットアングル】」


異能をかけて見えなくしてから少し気になっていた事を御剣たちに聞いてみる


「なぁ黒羽、さっき自動で影が攻撃を防いだがあれはどういう原理なんだ?」

「【影獣】は影獣を生む異能、自分で動ける」


なるほど、わからん

"自分で動ける"以外が全く意味が分からなかったわ


【影獣】は【影獣】を生む異能ってなんだよ

本当に訳が分からん、黒羽口下手すぎんか?


…まぁ、こういう時の御剣さんですよ!

って訳で御剣さんに聞こう、それくらい良いだろ


「御剣さんは何か分かります?」

「うむ、【影獣】は影を操る獣、影獣を飼う異能でござる、要するに影を操らせる異能でござるな」


なるほどね、影を操ってるようだけど影を操ってる訳じゃなくて影獣さんが影を操ってくれてるのか


だから他の影を操る異能とは色々違うよ、って事か

…えっ、そうなの?


「な、なるほど…」

「だからこそ視界外の影を操れたり自動で影が動いたりするでござる」


確かに他の異能は視界が通ってる事が条件とか言ってたよなぁ…


それに自動で動くのもこいつがあの囚人の異能から逃れてたからなのか


なるほど…じゃあ【影獣】は自分の技術じゃ無くて【影獣】の技術を鍛えないと駄目なのか


「そうか、そうだったのか…」

「…所で宗助殿、体調は大丈夫でござるか?人殺しが辛いならトドメは某が…」

「ん!私も手伝う!」


いや、それは駄目だろ

もう一人殺したんだし全員俺が殺すわ


「大丈夫ですよ、全部俺がやるので」

「そうで…ござるか…」


ああ、良かった、直ぐに引き下がってくれた

これで強く肩代わりするって言われたら誘惑に負けてたかもしれないからな


にしても俺、今まで【影獣】をかなり非効率な使い方で使ってたんだなぁ…


影獣をもっと使い熟していれば殺さずに済んだ囚人も居るかもしれないな…


なんて、無駄な事を考えながらまだ上に上がる

あー、また人殺すのかな、それはやだな、でもなぁ御剣さんとか黒羽に殺させるのはな…





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