第7話 体を休めてる間も練習

そして、依頼の場所へと向かう。

森の奥深くまで行く。


すると、ゴブリンが出てきた。


「ギィ!」

「おっと、早速出てきたな」

「私が行きます!」


ルルが前に出る。


「ウィンドカッター」


だが、同時に俺の風の刃が飛んでいく。


「ギャッ……」


俺はゴブリンを一撃で倒してしまった。

連携も何もあったものじゃないな。


俺はルルと一緒に宿に帰る。

寝る時に丁度いい魔法を使う。


今日は魔法のドリームワールドを発動する。

ドリームワールドは夢の世界で動けるようになる魔法だ。

つまり夢の世界でも魔法の練習をしたりする事ができる、ということだ。


「よし、今日も行くか」


目を閉じて俺は早速、夢の世界に入るための魔法を小さく唱えた。


「ドリームゲート」


すると瞳を閉じたせいで黒くなっていた世界に白いモヤモヤが現れた。


それに手を伸ばすようなイメージをすると俺の意識はそこに吸い込まれるようだった。



するとそこは真っ白な空間だった。


中には誰もいない。

とりあえずいつも通り少し散策してみよう。


そう思った俺は歩き出した。

しばらく歩いていると誰かがいるのを見つけた。


俺のよく知る人物である。


「先生?」

「はい。そうですよ」


驚いた。


何年も姿を表していなかった彼女にまた会えるなんて、とは思ったけどここは夢の世界。

俺の頭が映し出した光景だろう。


頭を振ると直ぐにリコは消えていく。

何度見ても慣れないものだ。


「またいつか会ったらお礼の1つでも言いたいくらいだが」


俺が冒険者をしている理由の1つにリコにお礼を言うというのもあった。

だが彼女に繋がる手がかりは今のところ何一つ見つかっていない。


冒険者をしているとそのうち出会えるような気はしているが。


さて、魔法の練習をしてみよう。

魔導王の腕輪。


これを使うとものすごい数の魔法が頭にリスト表示される。


その最後のリストには1番強い魔法が掲載されていた。

その魔法の名前は、アルテマ。


全魔法の中で最も強い魔法と言われているそうだ。


「アルテマ」


俺は声に出して目の前を燃やし尽くす魔法をイメージしてみたが


「だめだ。出ないな」


アルテマは出てこなかった。


更にその一つ下のホーリーも練習してみたが。


「ちっ。こっちもだめか」


実はと言うとこの魔導王の腕輪に記録されている魔法は理論上は存在するとされている魔法もかなりの数収録されていた。

例えばこの


「アビスゲート」


俺は唱えて黒いモヤモヤを生み出した。

その中から手が出てきてそれらが獲物を求めて、消えていく。

ここには獲物なんていないからこうやって時間経過で消えていく。


俺が理論上は存在する、と言われている中で唯一獲得できたのがこのアビスゲートだった。

この理論上存在するという魔法を古代魔法とか、神域魔法とか、何とかそんなふうに呼ぶらしい。


「ふぅ」


今日もアルテマもホーリーも習得できなかったか。


俺はドサッとその場に座り込んだ。

正直お手上げだ。


「習得できる気配がないんだよなぁ」


そう思いながら立ち上がってドリームワールドに敵を出現させた。

夢の中ではこういうことも出来る。


「ストーンレイン」


俺はその敵に向けて岩を上空から降らせる。

それらが当たり敵は潰れた。


その時、


「ふえっ?!」


声が聞こえた。

そちらに目をやるとルルが立っていた。


夢の世界は完全に独立している訳では無いからたまにこうやって俺の夢の中に迷い込んでくる人がいる。


今一つ屋根の下で寝てて、物理的にも距離が近いしルルは迷い込みやすくなってるんだろう。


「ど、どこですか?!ここ?!」


そんな事を言いながら俺を発見すると近付いてくるルル。


「ゆ、夢ですよね?夢みたいですね」


頬を抓って痛みを感じないのを理解したらしいルル。


「な、何だか分かりませんけど目の前にご主人様がいます!」

「どうしたのさ。って!どこ触ってんのさ!」

「ゆ、夢の中なので好きにしちゃいますよ?御奉仕の練習をさせてください」

「ちょ、ちょっとぉ?!」

「どうせ夢なので平気ですよね♡早速ご主人様の夢を見られるなんてルルは幸せ者です♡」

「ごめんルル。今はそういう気分じゃないんだよ」


俺は迷い込んできたルルに謝ってドリームワールドからつまみ出した。

ここは俺の夢の中だからそんなこともできる。


「あっちはどんな夢見てるんだろうな」


そんなことを思いながらルルの夢を少しだけ覗いてみることにした。

沢山の俺に囲まれているのを見て一瞬で覗くのをやめた。


それから数時間後。


「起きてください、シロナ様。ご飯作りましたよ?」


俺の声を呼ぶルルの声が聞こえた。

どうやら朝になったらしいな。


俺はドリームワールドを後にすることにした。


俺はこの腕輪を貰ってから一番最初に練習したのがこれだ。


ちなみに魔導王の腕輪にもこう説明書きがされてある。


アルテマもホーリーも人間に使えるものでは無い、と。


前世の知識で言うなら存在しているだけのデータみたいなものだと思う。


とあるゲームで改造者を炙り出すだけの武器や装備があったみたいに、データだけの存在なのかもしれない。


しかしアビスゲートは使えるようになった。

だからいけそうな気もするんだけどな。


「習得したいんだけどな」

「どうしたんですか?」


こっちの話だと答える。

夢の世界は精神世界。


疲れもしないし魔力も無限に使える。

周りに被害も出ない。

新しい魔法や威力が強い魔法はドリームワールドで練習するようにしている。


(人間に使えない魔法ということは神様連中なら使えるんだよな?)


そうだ。神様に教えて貰ったらいいんじゃないか?!

なんてことを思ってルルに目を向けたら目を逸らされた。


「どうしたの?」

「な、何でもありませんよ?夢の中で変なことしようとして目が合わせられないとか、そんなんじゃないですからね?」


なるほど、そういうことか。



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