第2話 先生を困らせてしまう

次の日、朝食を食べてから昨日と同じ場所、俺の父が所有する森の中に向かった。

するとそこには既にリコ先生が待っていた。


「おはようございます」

「ああ。おはよう」


挨拶を交わした後早速授業を始める。


「よし。では今日の授業を始めようか」


昨日は火属性の魔法を練習したから今日は氷属性の魔法を練習すると言うが、ちなみにグリーズ兄さんは俺が簡単に魔法を習得したのを見て脱落した。

今日からここにいるのは俺だけだ。


「いいかい?シロナ君氷属性魔法は火属性魔法より難しいんだ。火魔法を習得出来るのが100人に1人だ、とすると氷魔法は1000人に1人と言われてる」


ゴクリ。唾を飲み込む。

そんなに難しいのか氷魔法って。


「どうしてですか?」

「それはね……魔力操作が難しいからだ」

「魔力操作……ですか」

「うん。普通の人だと自分の中に流れる魔力を感じる事は出来ても、それを自在に動かす事まではできないんだ」

「でも俺は出来ましたけど……」

「君は例外だよ。天才だ」


リコ先生が昨日やってみせた魔力操作という技術を俺もやってみたが、それは才能がなければできないことだと言うリコ先生。

この魔力操作ができるとより強い魔法を放てるようになるらしい。


「だから大丈夫。君には才能がある。だからきっと習得できるはずだ」

「頑張ります!」


こうして俺の新しい魔法修行が始まった。

まず初めにリコ先生が手本を見せてくれた。


リコ先生の手の上に水が出てきた。


「これが氷の初級魔法、アイスアロー」


先生の右手の人差し指に小さな氷の矢が浮かび上がっている。

「やってみて」と言われて俺は早速やってみることにした。


集中して魔力を感じ取り、それを手の方に移動させる。

そしてそれを矢の形になるようにイメージして……


「アイスアロー!」


呪文を唱えると俺の右手のひらから氷の矢が現れ、一直線に飛んでいった。


「出来た!やりましたよ!」

「流石だね。じゃあ次は中級魔法のアイシクルランスだ」


もう中級魔法なのか?と思ったけど先生がそう言ったんだ。

特に何か疑問に思うことも無く俺はやってみることにした。


「はい!」


俺は再び魔力を操作し始めた。

今度はさっきよりもスムーズに魔力を動かすことが出来た。


「よし。じゃあやってみて」

「はい!」


さっきと同じように右手に魔力を集めて、そこから放出するように動かしていく。


「アイシクルランス!」


魔法名を唱え終わると同時に俺の目の前に大きな氷の槍が現れた。


「出来た!出来ましたよ!先生!ってあれ?」


俺が喜んでリコ先生を見ると、リコ先生は頭を抱えていた。


「どうしたんですか?俺何か間違えてしまいましたか?」

「シロナ君。今何をしたのか分かってる?」

「えっと……魔法を使ったんですけど……」

「違う。そうじゃない」

「じゃあ一体何をしたんですか?」

「アイシクルランスは詠唱が無ければ発動しないはずなんだ」

「あっ!そう言えばそうですね」


先生の基礎魔法がどうのこうのという講座で聞いたのを思い出した。

一部の魔法は詠唱をしてよりイメージを強固にしながら発動させる魔法だってことを。


でも初めて使う魔法に緊張して詠唱を忘れていた。

先生が口を開く。


「それがなぜできたんだい?普通なら詠唱無しでこの魔法を発動する事なんてできないんだよ」

「うーん。なんででしょうね」

「考えられるのはシロナ君に魔法の才能があって、ってことだけど、才能だけで詠唱破棄なんてそんな話、聞いたことがないんだよね。才能があっても詠唱は必要だよ」


そう言われても俺にもよく分かんないんだよね。

出来ちゃったものは出来ちゃったんだし。


「とりあえず今は練習を続けましょうよ」

「それもそうだね。じゃあ続きをやろうか。たまたまかもしれないしね」


その後俺はアイシクルランスを何度も繰り返した。

その結果俺は30回連続で成功させた。


「ほんとに凄いな君は。もうなんと反応したらいいのか分からくなってくるよ」

「そうなんですか?」


何と言うか先生はさっきから本当に呆れたような顔をしていた。

ほんとに反応に困っているんだと思う。


うぅ……。


悪いことをしたつもりはないのにこっちが悪い気になってしまう。

とりあえずごめんなさい!と謝っておこう。


なんかもう考えることを諦めてるような感じがしないでもない先生の顔。

そんなに俺は普通じゃないようだ。


「今日は終わりにしよう。一週間かけるつもりだったことが数時間で終わってしまったよ。明日も同じ時間にここに来てくれ」

「はい!」


「明日から何を教えたらいいんだ?」とブツブツ言っている先生の声を聞きながら俺は屋敷へと戻った。


夕食を食べ終え、風呂に入り、ベッドに寝転ぶ。


「ふぅ〜今日も疲れた〜」


そんな独り言を呟きながら俺は眠りについた。


次の日、朝食を食べてから昨日と同じ場所に向かった。

するとそこには既にリコ先生が待っていた。


「おはようございます」

「おはよう。早速授業を始めよう」


いつも通り授業が始まり、ファイアソードから始め、中級魔法のファイアボール、上級魔法のファイアストームと進んでいき、最後に中級魔法であるアイシクルランスを練習していた。


火属性魔法だけは上級魔法まで使えるようにはなったけど、ファイアストームは流石に上級なだけあって流石に一応使える、程度だった。


「よし。これで今日の練習は終わりだ。まさかファイアストームまで習得してしまうなんて思わなかったよ」

「ありがとうございました」

「いいよ。これくらい。それより少し休憩しようか」

「はい」


俺は子供だからまだまだ動けるけど先生は流石にキツイらしく休憩をしたがっているように見えた。

大人になるとなんか疲れるよね。すごい。


俺も中身はおっさんだったから分かりますよ先生。


「それにしてもシロナ君は本当にすごいな。たった数日でここまで出来るようになるなんて思ってもいなかったよ」

「いえ。先生の教え方が上手いからですよ」


他の先生の教え方なんて知らないけどこの人は凄い教えるのが上手いと思う。

なんか本当に言われたようにすると魔法が使えるようになる感覚だ。


「それでも、だよ。私だってここまで来るのに数年近くかかったんだから」

「そうなんですね」


驚いた。

俺の才能がそこまであったなんて。


そこまでだなんて思わなかったけど、でもやっぱり褒めてるだけなのかなぁ?

俺はお世辞程度に捉えておくことにした。


「ああ。だからシロナ君には感謝してるんだ。私は自分の小ささを学べたよ」

「俺こそ、こんなに早く魔法を習得できるとは思っていなかったのでとても嬉しいんですよ」

「そうか。それは良かった」


それから2人で雑談をした。

ふと先生が気になったのか聞いてくる。


「シロナ君。今日は何か予定があったりするのかい?」

「うーん……特にはないですね……」


今日の予定は本当に先生の授業を受けるだけだ。

そんな俺に先生はガバァっと寝転がっていた上半身を起こして提案してきた。


「だったら街に行ってみないか?色々あるよ街には」

「いいですね!」

「よし。じゃあ早速行こうか!君に教えることがなくて困ってたところだし」


教えることがなくて困らせてしまい、ごめんなさい!

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