第7話 とある村で



 エリオットと子供達二人は牧場のある村に居る。

牧場には白い鹿が飼われている。

エリオットは牧場を眺めるが、直ぐに子供達の姿勢を低くさせ、雑草の中を這いつくばるように進む。

時々、五歳のイズーが立ち上がって周りを珍しそうに見回すがブランシュにたしなめられる。


「ちょっと、やめてよ、見つかったらどうするの?」


「どうもしないわ。その時が戦いの時よ」


 二人の会話を聞きながら、エリオットは低い姿勢のまま進み続ける。

今はまだ良い、妖魔の気配がない、今怖いのはこの国の人々だ、まだ状況を把握できていない。

迂闊に動いてこの国の民に見つかればどうなるか想像もできない。

暫くは潜んでこの国の民の意識や、どのような治法があり、それを守る権力、調べなければならないことが山積みである。

然も、既に妖魔がこの国に散らばっている以上、いつ襲われるかも分からない。

最新の注意を払って事を成就しなければならない。

エリオットは振り返って後ろの幼い王女二人を見る。


 無心になろう、今はそれが良い、そう思わざるを得ない。


 エリオットはまた前を見て、ゆっくりと歩きだす。

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