第24話 二人の王子

 ユリウス様と共にコーデリア国を去るときがやってきた。

 私は自分用に貸し出されていた部屋を後にしようとしたところ、ノックする音が聞こえて返事をする。

 部屋に入ってきたのはレオだった。


「レオ様……?」

「もう帰るのか」

「はい、本当にお世話になりました」

「いや、迷惑かけたな。いろいろ」

「いいえ! こちらこそレオ様には良くして頂きました。ありがとうございました」


 お辞儀をして顔をあげようとした瞬間、がばっと勢いよく抱きしめられた。


「レオ様っ!?」

「なあ、本当に俺の妃にならないか?」


 私の髪ごと頭を支えて、もう一つの手に腰を強く引き寄せられている。

 彼のあたたかさを感じた。


 最初は彼のことを敵だと思って苦手だった。

 だけど、彼の優しさをどんどん知っていった。

 妹思いで、私のことも大切にしてくれて……。


 でも……。


 私はそっと彼の胸を押し返して目を見つめる。


「ごめんなさい、私はあなたの妃になれない。私は……」

「あいつか」


 「あいつ」がユリウス様のことだとわかって、私はゆっくりと頷く。


「ユリウスが表で待ってる。行け」

「レオ様……」

「もしあいつに泣かされたら、俺のところに来い。いつでも来ていい」


 私は笑みを浮かべて再び頭を下げると、彼と別れた──



 王宮の玄関口に向かうと、馬車の傍でユリウス様が待っていた。


「ユリエ」

「お待たせしました!」

「帰ろうか」


 そうして差し伸べられた手を取った。



 馬車の中で私はコーデリア国での思い出を浮かべながら窓の外を見ていた。

 すると、手に温かいものを感じて振り返る。


「ユリウス様?」


 私の手に彼の手が重ねられていて、さらにその手は彼の唇に寄せられていく。

 照れてしまって顔を赤くする私に追い打ちをかけるように、ユリウス様はわざとちゅっと音をたてる。


「あなたが心配でたまらなかった。無事でよかった」

「ご心配、おかけしました。私もその……」


 私は少し恥ずかしい気持ちを抑えて、勇気を出して告げる。


「会いたかったです、ユリウス様」

「ユリエ……」


 じっと見つめられた瞳に吸い寄せられるように、私と彼の距離は近づいていく。

 そうして、目をつぶった少しあとに、唇に柔らかいものが触れた。


 彼とまた過ごせる。

 その幸せを思いながら、クリシュト国へと戻った──




******************************


【ちょっと一言コーナー】

第二部「隣国陰謀編」完結しました!

応援ありがとうございました。

また少しずつ第三部である「故郷帰還編」を開始します!


「小説家になろう」では先行完結しました。

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