33話 ポンコツ雪女
「うーん…あ、あれ?何で私洞窟に…」
「あ!起きましたよ!」
途中から俺達も参戦し、みんなで雪女を介抱していたら遂に雪女が眼を覚ました。
「頭ボーッとする…それとみんな誰…?」
「お!じゃあとりあえず…」
「何 で 襲 っ た か 教 え て ね」
満面の笑みをしたニコラの剣が雪女の首に当てられた。
「ひいいいいい!?!?なななな何これ何これ!?何で私命の危機になってるの!?」
流石にこんな状況になれば頭も一瞬で覚醒だ。
…嫌な目覚めだがな。
「何でって、あんたがそこらじゅうで吹雪を起こしてたからじゃにゃいか」
「吹雪!?何のこと!?」
「ふーん、しらばっくれるんだ」
「いい加減白状しろにゃ!」
「いやああああああ!?!?!?揺すらないでえええええ!!!!剣がーー!!!首に剣がーー!!!」
ネネは胸ぐらを掴んで雪女をぐわんぐわん揺すり、ニコラはニコニコしながら剣で首もとをペシペシ叩いている。
「ニコラ、一旦止めろ」
「ネネさんも、落ち着いて下さい」
ヨアンとヴィラが止めてくれたから、ようやく二人とも大人しくなった。
「殺すのは最後で良い。とにかく情報を引き出すぞ」
「私が死ぬのは決定事項なの!?」
「んー…とりあえず新型雪女って聞いたことない?同じ雪女だしさ、知ってたら教えて欲しいな」
「し、新型?ううん、知らな…あ、もしかして…」
お、この感じ。何か心当たりがありそうだな。
「何か心当たりがあるのか?」
「うん。…と言うか多分私だそれ」
「え?」
どこが新型?
全員が間違いなくそう思ったはずだ。
「ふーん…じゃあキミを倒せば解決って事だね!」
ニコラの剣が再び雪女の首に当てられた。
「ひいいいいい!?!?まままま待って待って!!別に危害を加えたくてやってる訳じゃないの!!」
ちなみに雪女はモンスターには分類されず、魔族に分類される。
だから退治が必要かと言われれば違うが、悪いことをしてれば当然報いを受ける。
これは人も獣人も同じだな。
余談だが雪女は全種族から見ても弱い部類に入るらしい。この辺は個人差があるから何とも言えないが。
「…一応理由は聞きますわ。もし録でもない理由でしたら…」
カレンが目で合図を送ると、首にあてがわれた剣がゆっくりと動き始めた。
「ひゃああああ!?!?殺されるううううう!?!?…ごふっ」
「あ」
恐怖が突き抜けたのか、雪女はそのまま泡を吹いてまた気絶してしまった。
***
「とりあえずまた目覚めるまで待機か」
「またかよ」
「時間取ってホントにゴメンねー!終わったら割増にしてお礼するから!」
***
「うーん…あれ?確か剣が首に…ひぇっ!?わ、私生きて…る…?首ある!?」
「あ、目が覚めた?」
「ひょえええええ!?!?ごめんなさいごめんなさい!!二度と子供達には関わりませんからぁ!!」
目覚めて早々、騒がしい事で。
まああんな対応されてたらこうなるのも必然か。
「質問に正直に答えたら多分何もしないから!だから安心して!」
「多分って何!?そう言う所が恐いのよこのサイコパス!!」
「 何 か 言 っ た ? 」
「何でもありませええん!!全て正直にお話しますうう!!」
おー怖…
実力差がはっきりしてる中で脅されたら従うしかないよな…
尋問開始
「えーこれはとてもとても寒いある日にあった私の一コマの物語でして…」
「ふざけないで早く言ってね」
「すみませんだから笑顔で首に剣を当てるのはやめて下さいお願いします」
***
えーっと、確か一月くらい前だったかな?
どうしても寒くて寒くて…我慢出来なくて厚着してた日があったんだけどね、その日に子供達に鉢合わせたのよ
でも私は襲う気は更々無いし、せっかくだから仲良くしようと思ったんだ
ただ…その時に運悪く猛吹雪が起きちゃってさ、その後も私が関わろうとする時に限って度々雪崩とか暴風とか色々あって
だから怖がってたのは私が来ると悪い事が起こるって思われたんじゃない?
その辺からかな?「新型雪女だー!」って言われ始めたのは。
新型って言うのは多分だけど、厚着してたからだと思うよ?雪女って普通は薄着だし。新型は子供達の勝手な命名でしょ
***
「まあこんな感じかな?」
一応辻褄は合うな…
「だが毎日厚着してた訳じゃ無いんだろう?服装を変えれば大丈夫にも思えるが」
「あー…どうも私、顔を覚えられたみたいなの。何回か寒くても我慢して薄着したけど『こないだの雪女だー!!』って逃げられたし…」
「そんな単純な話だったのか…」
「嘘もついてなさそうですね」
「ミラが言うと凄い説得力だにゃ…」
「じゃあ帰ったら子供達の誤解を解いて、それで雪女の件は解決だね!」
もっと深い問題かと思ったけど、想像以上に浅い問題だったな…
「じゃあさっきの吹雪は何だったんだにゃ。あれはどう見ても故意だったにゃ」
そうだ、今のはわざとでは無かったが、こっちは完全に故意だったはずだ。
「そ、そんな事言われても…本当に知らないんだって…」
「今さらしらばっくれるとでも?」
「ほほほ本当だって!!信じてよ!!」
それからニコラ達は何度も脅したが、全然白状しない。
大泣きしても、顔の真横に剣が突き刺さっても、燃やされかけても、吐こうとはしなかった。
「うぇぇぇん…違うんだってばぁ…ホントだってばぁ…信じてよぉ…」
「まだ言わないの?じゃあ次は…」
ニコラが雪女に剣で何かしようとした瞬間、二人の間にヴィラが立ち塞がった。
「もう止めましょうよ!泣いてるじゃないですか!いくら何でも可哀想です!」
「えー?でも吹雪起こしてたのはホントじゃん。みんなも見てたでしょ?」
ニコラは俺らに同意を求めてる様だ。
でもな、今日あったばかりの人と色々苦難を乗り越えてきた仲間。
どちらに味方するかは言うまでもない。
「いや、俺は見てないぞ?」
「ネネも見てないにゃ」
「僕もですね」
「あれ?」
まあ見てないのは本当だしな。あの吹雪で見えるわけないし。
俺らが見たのは捕獲された後だけだ。
「ほら!彼女がやったって証拠は無いんですよ!それなら他の可能性を考えるべきです!」
「他の可能性かぁ。んー…ヨアンとか何か分かる?」
「他の可能性か…考えられるのはもっと上位のモンスターが居て雪女を操ってたか、吹雪が入ってきたのを僕達が勘違いしたか」
「後は超常現象の類いですわね」
よし、気を反らす事には成功だな。
「うええーん!!ありがとー!!」
「ほら、もう大丈夫ですよ」
ヴィラは抱き付いてきた雪女の頭をナデナデしていた。
それにしても…
「見た目がヴィラさんにそっくりですね」
「滲み出るポンコツ具合とか良く似てるにゃ」
「どういう意味です!?」
髪型や服装とか細かな所は違うが、顔のパーツとか雰囲気とか大まかな部分はそっくりだ。
確かに遠目で見たら雪女と間違えても無理はないかもしれない。
「その髪纏めて横に並んでみてにゃ」
「こう?」
お、身長差はあるが、姉妹と言われても不思議じゃない。
「瓜二つだにゃ」
「姉妹みたいですね」
「姉妹…」
「お姉ちゃん!」
「ひゃっ!」
何を思ったのか、雪女はヴィラに飛び掛かった。
「えへへー!お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「んー?どうしたんですか?」
雪女はヴィラの鳩尾辺りに顔を埋めてすりすりしている。
そんなヴィラもちょっとにやけている。満更でも無さそうだ。
「…お姉ちゃんムネ無くて硬いー」
爆弾発言にヴィラの時間が瞬時にして止まった。
「そ、そ、そう言う身体的な差別は言っちゃいけませんよ?」
「ぶー」
「差別と言うか事実じゃにゃいか」
「しっ!余計な事言うな!」
「そうだ!私ねー、お姉ちゃんにお願いがあるの!」
「な、何でしょうか?お姉ちゃんに任せて下さい!」
それにしてもこのヴィラ、ノリノリである。
「お小遣いちょーだい!」
「調子に乗らないで下さい!」
ゴチンッ!と言う音が洞窟内に響いた。
「あうあー…」
「もうっ!これに懲りたら人にお金をせがむ事など………」
何となく全員察してきただろう。
『この雪女にあんな吹雪を起こす力は絶対に無い』
ってな。
雪女は頭にヒヨコが飛んでるが、まあ大丈夫だろう。
「結局あの吹雪は分からないままかー」
「まあ良いじゃないか。僕達はたまたま超常現象に出会った。それだけだ」
「人生何があるか分かりませんもの。そんな物の一つや二つあっても良くってよ」
この三人も無かった事にしやがった。
本当に図太い連中な事で。
さて、時間はかかったが一連の雪女関連は解決だ。残すはすぐ近くにあるユキメロンを回収するだけだな。
「おーいヴィラ!雪女も良いが早く行くぞー!」
「何ぼーっとしてるんだにゃ?」
『…いえ、何でもありませんよ』
「んじゃ、さっさと回収するか」
『…クスッ』
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