第8話 夜会


「何でそんな事するにゃー!!死ぬなんてバカな事は止めるにゃー!!そんなのネネが許さないにゃー!!」


にゃーにゃー騒ぎながら俺をぐわんぐわん揺さぶって来る。


「お前ネネか!?いいから落ち着け!!」


「嫌だにゃ!そのナイフを手放すまで離さないにゃー!!」


抵抗しようにも、俺のパワーじゃネネには到底敵わない。


ここは従うのが得策か。


「ああもう!分かったよ!捨てるから離せ!」


俺はナイフをその場に捨てた。


「で!何でそんな事したにゃ!」


「別に何でも良いだろ」


「良くないにゃ!」


ああもう、にゃーにゃーにゃーにゃーしつこいな…


何とかして話を反らさないと…


「てかネネは何でここに居るんだよ。一応人目が付かない所に居たはずだが…」


「ネネかにゃ?それは…」




『にゃあ~…お腹空いたにゃ…お金も無いにゃあ…』


『釣具も壊れてるし、もう森で木の実でも採るしか…でも夜の森は怖いにゃあ…にゃ?何の匂いにゃ?』


『この匂い…アジサカナだにゃ!誰だか知らにゃいけど、こうなったら恵んで貰うにゃ!』


『くんくん…こっちだにゃ!』


『見つけたにゃ!…あの人、今日ネネの依頼受けてくれた人かにゃ?』


『背に腹は変えられんにゃ…まだ2匹残ってるし、土下座してでも恵んで貰うにゃ…』


『…ナイフ持って何してるにゃ?しかも自分に向けるにゃんて…』


『まさか…!バカな真似はやめるにゃー!!』




「と言う訳にゃ」


思った以上に下らない理由だったー!!


てか原因俺じゃん!


匂いが強かったのか、ネネの嗅覚が鋭かったのか…まあどっちでも良い。


ここから話を反らすには…そうだ!


「くそ…騒いだら腹減ったな…もう一匹食うか…」


「にゃにゃ!!」


アジサカナを手に取ると、予想通りネネは食い付いて、魚を見ていた。


「ん?何だ?」


「ネネも食べたいにゃ…お腹空いたにゃ…」


後はこれを渡して…


「食うか?」


「良いのかにゃ!?」


おもしろい程食い付いたな…どんだけ腹減ってたんだ…?


「まあ半分は俺のせいでもあるし…」


「ありがとにゃ!」


一応反らせた…かな?





「美味しいにゃ!美味しいにゃ!」


焼き上がった瞬間、ネネはアジサカナにかぶり付いた。


「落ち着いて食えよ」


「お腹空いてるから無理だにゃ!…美味しかったにゃあ~」


「早いな!?」


俺はまだ胴体に二回ほどかぶり付いただけだ。本当にお腹が空いてたんだろう。


食べてる間物欲しそうな顔したネネに見られてたが、もう流石にやらんぞ。


暫くして俺も食べ終わり、火の始末をした。


ヴィラと違い、ナイフを没収されなかったから回収は出来たが、今日はもう致す気分になれん。


「今日は毒草も集まったし、焼きたてアジサカナも食べれたにゃ!しかも人助けも出来たし、良い1日だったにゃ~!」


ネネはその場に上機嫌で寝転がった。


「何でそんなに呑気…いや、ポジティブに生きれるんだよ…」


「命あればモーマンタイにゃ。とりあえず生きとけば、何とかなるにゃ。事実、今日は三つも良い事があったにゃ!」


にゃはは~!と笑いながらネネは言った。


「だからあんたも生きるにゃ。思った以上に世の中は単純にゃ」


単純…か…


『俺はお前の都合の良いサンドバッグじゃねえんだよ!!』


『ひっ…』


言われてみれば、シュリの時もあんなに恐れてた割には随分と呆気なかったしな。


もっと気楽に行くのもあり…かな?


「一理あるかもな…」


「何か言ったかにゃ?」


「何でもねえ。もう寝る」


「お休みにゃ~」


まあ朝になればネネも帰るだろ…






「くぁ…もう朝か…」


さて、致すのに二回も妨害を喰らったから、流石にやり方を考えないとダメだな。


今までの人目を避けて致すのは、出来ない前提で考えよう。


生きる為に金も欲しいし、さてどうした物か…


「にゃ~…もう朝かにゃ?」


…ん?


「ネネ!?」


横を見ると目を擦るネネが居た。


「おはようにゃ~なんかご飯持ってないかにゃ?」


「持ってねえよ!てか何で居るんだよ!家帰れよ!」


「あんな事した人を置いて帰れる程非情じゃないにゃ」


言われてみればそうだな…


「そう言えばこれからどうするんだにゃ?」


「いや、金貯めたり別の街や都市を転々としようかなって…」


「じゃあネネも付いてくにゃ」


はい…?この猫耳は何を言ってらっしゃる?


「どうせ退屈な毎日だったにゃ。だったら付いてった方が楽しそうだにゃ」


また面倒な…


ヴィラと同じ様に突き放して…いやダメだ。理由が無いし、このタイプは何しても付きまとうだろう。どうすりゃ良いんだ…?


だが俺は閃いた。これはある意味チャンスじゃないか?と。


ネネと組んで実績を作る

強いモンスターや危険な依頼を受ける

合法で死ぬ確率を上げれる&報酬金が増える

報酬金で家を買い、部屋で何度も致せる


ネネの監視こそ付くが、もう四の五の言ってられん。


金を稼いでも、俺の稼ぎじゃ生活費や食費に結構持ってかれて、全然貯まらん事は目に見えてる。


だったらネネと一緒に徐々にレベルの高い依頼を受けた方が、最終的な総稼ぎは高くなるはず。


それに流石のネネでもプライベートまでは侵入しないはずだ。てか、そうしないともう自力で致せる気がしない。


当然、自分で致すのは諦めないが…こっちは別の手段を考えないとだな。


賭けにはなるが、最悪失敗しても金は残る。俺のデメリットは少ない。


受けてみるか…!


「まあ…ネネが良ければ」


「じゃあよろしくだにゃ!…そう言えば何で呼べば良いにゃ?まだ名前聞いてなかったにゃ」


「俺はヤマだ。それで頼む」


「分かったにゃ!」


ネネが仲間に加わった!


「さて、そしたら腹ごしらえと金稼ぎだな。二人なら多少は難しくても良さそうだが…」


「あ!なら良い依頼知ってるにゃ!」

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