第25話 決勝戦開始!

「さあ、始まりました。Val公式主催ヴァルカップバージョン1。早くももう最終日ですね。本日は決勝戦を実況していきます」

「今日もいつものメンバーでお送りします。では、早速ですが、各チームにインタビューしていきます。皆さん、聞こえていますでしょうかー?」


『はーい』


 実況席の声にBチームとCチームの僕たちは元気よく返事をした。


「はい、それではBチームのリーダー、零さん。意気込みはどうですか?」

「はーい。そうですね、今のところ俺たちのチームが全勝ということで、決勝でも勝ってパーフェクト目指します」

「Bチームは予選で全勝ですか。すごいですね」

「やっぱり、世界一位の安定感があるからですかね」

「いいえ、チームの連携があるからこそできています。自分が自由にできるようにしてもらっているから破壊できてます」

「そうですか。持ち前の連携で零さんの破壊を期待してます。頑張ってください」

「はい、頑張ります」


「続いて、Cチームリーダー、花蓮さん。意気込みをお願いします」

「ん。優勝する」


 うん、雑だなあ。花蓮のことだから、やると思っていた。


「あはは。優勝する一心ですね」

「Cチームはそうですね。圧倒的な速さですよね。今日もその速さが生かされるか期待ですね」

「そうですよね。あと花蓮さんの攻撃ロールもすごいですよね」

「Cチームの逆転劇となるか。Cチームも頑張ってください」

「ん。頑張ります」


「それでは、みなさん。また決勝戦で」


 その一言で、僕たちはCチームのVCに帰った。


 __________


「うーん、雑だな」

「やっぱり、やったなあ」

「花蓮ちゃんだもんなあ」

「あはは、花蓮らしい」

「ん。別に勝つだけだし」

「そうだけどさあ」

「まあ配信として盛り上げたからいいか」

「あ、招待来たよー」

「呼んでー」

「全員送った」

「あ、もうレディだって」

「了解。今行く」

「全員揃ったね。レディっと」

「それじゃあー」


『ファインティング!!!!!』


 __________


 第1マップは最近のアップデートで新たに導入されたマップだ。爆弾を設置するAとBに、複雑に入り組み、それぞれの設置場所に繋がるミッドがあるマップ。それで、僕たちは攻めからスタートだ。


「攻め有利だから、多めにラウンド取りたいね」

「ん。まあ、スナイパーでたくさん倒して、Bに行こう」

「他力本願なんだよな」

「はいー、頑張りますー」

「ルート君に合わせるから任せた」

「ミッド行こうか」

「うん」


 このマップは今回の大会で公式的に配信される。そのため、まだまだこのマップの有利な所いわゆるメタが少ない。そのため、いかに自分たちのチームでメタを見つけるかが重要だ。

 そこで、僕たちはミッドを多くとることを作戦とした。複雑だが、そこを崩すことで攻めがうまくいくと考えたからだ。


 しかし、それは相手も考えていたようだ。キラトさんがやられてしまった。人数状況が4対5。


「うわー。相手4人で守っているなあ」

「ローテしようか。A行こう」

「うん」

「設置しきろう」

「閃光に合わせてエントリーする」

「せーの」

「一人いる。あ、奥に下がった」

「リテイクで来るな。人数不利だから、サイトで戦うよ」

「うん」


「ごめーん。CT側2人、どっちもハーフ」

「ん。1人やった。私もやられた」


 花蓮とイフさんも落ち、2対4となっている。一人でも削ろうと前に出たら、


「うわ、忍者。零さんだ。ごめん、やられた」

「あ。ナイストライ」

「ん。惜しい」


 零さんが突っ込んでこられ、僕とレナさんはやられてしまった。


 それから、4:8で僕たちは攻めを終えた。12ラウンド中4ラウンドしか取れず、なかなか厳しい状況だ。また、このマップはいわゆる攻めマップであるため、これからの守りが難しい。何とか打開したいところだ。


「うーん。どうしましょう」

「相手もミッドを攻めればいいということわかっているよね」

「ん。なら私たちはメインを攻めよう。ミッドを開けよう。で、A、Bリンクを中心に遅延する感じかな」

「零さんそれでも突っ込んできそう」

「全員で倒すしかないよなあ」

「ん。そこは気合」

「気合いだなあ。……頑張ろう」

「ファインティングだね」


「ナイス~」

「これで同点か」


 そう、僕たちは4:8のところを8:8まで取り返した。


「ルート、次もFBを取って」

「はーい。なら、次ミッド行きますね」

「索敵いる?」

「なしでスローピークします」


 FB、ファーストブレッド。最初に敵を倒すことだ。敵を優先的に倒すことで、人数不利が生まれ、その後の試合を有利に進められる。

 僕はひたすらにスナイパーで敵を撃ち抜く。そして、スキルを使って安全に仲間のところに帰る。それから、いつも通り守る。この作戦が上手く刺さっているようだ。


 しかし、それはここまでのようだ。


「ごめん。やられたー。スローで三人出てきた」

「……ん。対応された」

「足音多い。Aリンクからラッシュぽい」

「ん。寄る」


 スナイパーの弱点は複数人戦だ。一発ずつしか打てないスナイパーでは一人倒したとしても二人目の人にやられてしまう。

 また、今回は三人いる。ということは、スキルで逃げられる前に確実に僕を倒そうということだろう。

 相手の作戦が変化した。この状況を打開しないと。


「ナイストライ。ごめんー」

「どんまい」

「これどうしようね。僕も勝負しようか?」

「いや、避けるようにしよう」

「ん。そっちの方がいい。デフォルトでルートが自由に歩く感じ。みんなもサイト内で戦う感じでいいよ」

「了解」

「はーい。次ウルトで俺が壊しちゃうよー」

「イフさんー、頼みます!僕もウルト切りますね」


 これで、ファーストブレッドは取ることが難しくなる。人数有利が作れないため、なかなか厳しそうだ。それでも、僕はスナイパー。絶対外さない。


「……30秒切ったね。B確定でいいかも」

「僕1回ピークしますね。いたっ」


 息止める。一瞬でエイムを合わせる。そして、左クリックする。


「ナイスワン__」

「3人見えました!スローかかっているのでキラトさん出て!」

「うん!2人やれた。もう1人もロー!」

「やれたよ。あと一人どこかわからない」

「キープかな。時間ない」


 残り4秒。3、2、1、そして0。敵は現れなかった。相手が爆弾を設置できなかったため、このラウンドは僕たちの勝ちだ。


「ナイス~」

「ナイス!」

「ん。ナイス。次、ラッシュ注意。ウルトたくさんあるからね」

「早めに引いて、設置した瞬間にリテイクした方が刺さりそう」

「今日まだやってないからね。僕もそれがいいと思う」

「んー。そうしよう。あと各自の判断でウルト切っていいからね」

「了解。頑張ろう」

「ファインティン~」


 __________


 そうして。


「……あ、そこかあ。ごめんー」

「惜しい。どんまい」

「あー、惜しかったな。ソリー」

「いや、ナイストライ。まだまだ1マップ目だよ」

「惜しかったねー。てか、こんな長いオーバータイム初めてだよ」

「ね」


 1マップ目では負けてしまった。17:19というとてつもなく長い試合を終えた。

 普段は片方のチームが13ラウンド取ると終わる。しかし、12:12の場合、オーバータイムといい、攻守を再び交代しながら、先に2ラウンド取った方が勝ちというルールに変わる。いわゆる、テニスや卓球のデュースのようなものだ。

 一マップだけで36ラウンドもプレーをした。正直に言って、


「疲れた」っと。


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