第22話 大会二日目

 そして、夜になった。今日は昨日より余裕をもって練習することができた。

 みんな集まっているし、そろそろ配信をつけよう。あ、配信の遅延も忘れずに。

 よし、できた。それじゃ、また三分後にね。


 __________


「僕も配信付きましたー」

「はーい」

「みんなできたね。よし、始めようか」

「はい」

「うん」

「ん」

「今日何試合目だっけ?」

「今日は……俺も忘れた」

「えっと三試合目だけですね。ラストのAチームとの」

「ルート君、ありがとう」

「いえいえ」

「Aチームか。守りが強いところだっけ」

「ん。だから、結構ゴリ押す予定」

「ふふ、結局パワーか」

「ガンガン攻めるか」

「あ、本配信始まりましたね」

「とりあえず、ゆっくり見よう」

「ん」


 _________


 僕たちは出番まで、視聴者と共に試合を見ていた。実況の配信から見ると、実際のプレーとは全く違うなと感じた。実況の視点から見る、Valも面白いな。

 その後、今日も全員で仲良くエイム練習に行った。今日は、花蓮にボコボコにされずに済んだ。


「さて、できるだけ攻めでたくさんラウンド取りたいね」

「ん。守りは気軽に。あと遅延多めで」

「了解」

「それじゃあ」

『ファインティング!!!!!』


 ついに、総当たり戦、最後の試合。Aチームとの戦いだ。僕たちはこの試合になんとしてでも勝たなければならない。決勝戦に進むために、僕たちは全力で戦う。


「あ、A結構多い」

「ん、私寄るね」

「僕たちはここで待っているね」

「うん」

「ラークしてエリア広げる。来そう。フラッシュと爆弾置く」

「まだ入ってない。あ、飛んだ!」

「B側。キラトとレナ、遅延して下がって」

「うん」

「了解」

「設置されたよ」

「ルート遅れて、裏にワープして。囲んで倒す」

「いける」

「せーの」

「全員サイトいた。あ、エルボーとザリガニにいる」

「あ、やられ__ナイス、カバー」

「毒入れた。まだ時間あるよ」

「このまま押そう」

「うん」

「二人落ちた。あと一人!」

「解除するね。カバーして」

「ナイスー」

「ナイス!」

「なあいす」




「うーん。おしい」

「ナイストライー」

「最後の守り、どうする?」

「ん。武器はぎりぎり……Aルート1人でB4人でやろうか」

「遅延多くしてリテイクかな」

「ん」

「了解ー」


「あ、B3人ぐらい足音する。スキル壊してほしい」

「おけー。索敵の鳥がロングに来た。スキル返すね」

「ガンガン使って」

「あ、ロングから入りそう」

「レナ、合わせやろう。行くよ、ほい」

「えい。ごめん、ずれた」

「大丈夫、結構削れている。あ、ワープ。たくさん」

「ルート、耐えて」

「シャワー側だね。毒をたくさん出して……うっ、きついからウルト使うね」


 敵は一気にA側を攻めてきた。今は僕一人しかいない。なんとかして耐えなきゃ。ありったけのスキルと強力なウルトを出し、牽制した。それでも、まだ敵は僕を倒そうと銃を撃ってくる。

 まずい、さすがにきつくなった。だが、僕は2人の言葉を思い出した。


『あなたの強みは一人で完結できること。それだけ、あなたは力を蓄えている。だから、あなたは自信を持ちなさい。そしてあなたがしたいことをしなさい』

『智樹は強い。お前が頑張ればなんとかなる。あと、智樹はルートだろ?自分自身で無限の可能性を否定してどうする。自分が勝つということを』


「……止められなさそうだから、前出ます」


 時間は25秒。敵は時間をかけて僕を倒しに来れない。短期決戦に持ってくるだろう。だから、僕は全員倒す。


 __________


 それはあっという間のことだった。

 初めてだった。弟子に作戦を無視された。いや、私の作戦では難しいと判断して、ルートは戦ったのだろう。実際あの状況、敵に爆弾を設置させなければ勝てる。また、相手のウルトも豊富でその後のリテイクも難しそうだった。


 一人また一人。ルートは敵を倒していく。少ないスキルの中、きれいに戦っていた。緑色の毒をまき散らしながら、敵を穿っていく。


 残り10、9、8。カウントダウンと共に、ルートはまた一人、もう一人、そしてもう一人倒した。つまり、敵を全員倒した。


「エース」


 一人で敵を五人倒した時のみ流れるゲームのアナウンス。みんな唖然としていた。その中で、彼は微笑んでいた。

 私はその時感じた。もう、ルートは強くなったと。だから私も笑顔で


「ルート、ナイス!」と弟子を褒めた。


 __________


 エース、僕はこの大会で初めて取れた。もちろん、5人キルすることはとても難しい。でも、零さんなど強い人たちは例え逆境に立っていたとしても、エースを勝ち取る。そんなに難しい、このエースを僕は取れた。

 やっと、やっと。ここまで、来たんだ。半年以上、一歩ずつ歩いてきた。だから、今日も踏み切ろう。


 そして、僕は最後の最後まで力を出し切った。

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