「愛しい人を噛みたくなる」

少女の独白から始まる本作は、人魚との出会いを境に大きく人生を変えた者たちが描かれている。

本作の読みどころはこの時代ならではの社会的な問題を提唱しつつ、大いなる海や人魚の習性・文化を始めとした人魚に纏わる伝承、そしてその特性が故に遺された『もの』について考えさせられることだろう。
海に魅入られたものは遍く海に回帰するのか、最後には希望を持たされるが果たして……

地の分は静かに落ち着いて語りかけるようで、俳優が読み聞かせているかの如く魅力的だった。