Ⅰ 放浪の旅立ち 

  第二章  放浪の旅立


       Ⅰ


「さて、何処に行こうか……」俺は家を出ると、ままよ、足の向くまま、気の向くままに、行動してみようと宛の無い旅に出た。とりあえず新大阪駅まで出てみた。ちょうど発車直前の新幹線が止まっていたので、飛び乗った。何処に行くのだろう? 行く先を確認すると、博多行きであった。博多か……まぁ、いいか、とひとりごちた。そうだな~先ずは広島で散策してみるか。原爆の被災地でもあるし。適当に自由席に座っていると、車掌さんが廻ってきたので、

「広島駅までお願いします」

そう言うと、切符を切ってくれた。大阪の街を出るのは生まれて始めてだった。走っている新幹線の車窓をボンヤリと眺めていたら。新幹線にしてはやたらと停車する駅が多い。そうか、この列車は"こだま”だったのか。まぁ、いいか急ぐ旅でもあるまいし、のんびり車窓を眺めるのもいいもんだ。山陽の景色は瀬戸内海が見えたり隠れたりして、緑の多い美しい景色が多かった。もう少しで岡山駅かな。しかし、岡山県にはこれと言った見所がないからな。ヤッパリ広島にしといて良かったな。すると、通路側に座っていた中年の男性が、

「そうだね、あにさん。岡山は桃と、焼き物とアイビースクエアぐらいかな。は、は、は」と俺の方を見ていった。地元の人なのかな?

「アイビースクエア? 何ですか? それ」

「大したもんじゃねえべ。単なるお洒落なホテルの名前だ」

「へー、洒落たホテルなの? つまんねえな」

「でも、若い女の子には人気があるみてえだ」

ふーん、俺は聞き流しながら空返事をした。こうやって、電車に揺られてると、高校の時を思い出した。佐久間淳子や小笠原さんは、今ごろどうしているのだろうな? 淳子はもう結婚をして、お母さんにでもなる照るかもしらねえな。小笠原さんはきっと今ごろは、東京大学付属病院の脳外科か心臓外科医になって、研究をし続けて立派な外科医になってることだろうな。

――何のために生きてるの

――生き甲斐はなに

――目標の無い人は人類の迷惑

――生産性の無い人生は世の無駄

 あんなこと言われちゃへこむよな~、俺の大きな心の傷だった。

 なんてことを考えている内に広島駅に着いた。

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