楓のステータス(偽装バージョン)

「ではっ!カエデさん、こちらの『鑑定晶かんていしょう』に手を触れてくださいっ!」

「はぁい……………」



 メアリさんの元気い~っぱい!な声とは反して、私はげっそりとした半ばゾンビみたいな声で答えた。


 原因は言わずもがな。ついさっき小耳に挟んだ冒険者さんたちのヒソヒソ話である。


『まぁなんにせよ……………カエデ、とか呼ばれてたか?』

『あぁ。あの子には、これから期待だな』



 マッッッッッッッッジでやめて欲しい。


 というか私クレアちゃんに頼まれたお仕事があるから世界中に行かなきゃいけないらしいしそれこそ有名になっちゃったら仕事しづらくて困るじゃん?だから世界に名を轟かすとか嫌なんだよねしかも私が憧れてたの正義のヒーローじゃなくてどちらかといえば影の実力者だし?有名になっても私嬉しくないよ?


 と、グダグダ言い訳をこねくり回しながらも、私は机の上の『鑑定晶かんていしょう』に手を伸ばす。


 ちなみにこの『鑑定晶』は昨日使われたものよりももっとハイグレードなやつで、スキルだけでなく称号コードも分かる、というものだ。


 そもそもこの世界において、スキルと称号コードはかなり似ている。


 スキルとは、その人が使いたいタイミングで効果が発動されるもの。呪文を唱えたら炎が出るよ、みたいな。

 その人の性格にあったものが選ばれるのが特徴。


 そして称号コードとは、意思に関係なく常時発動されているもの。

 基本の称号コードはまず種族を表すもの。『人間』『神』『精霊』みたいなのがこれにあたる。

 種族ごとにいろいろ効果があるんだよね。人間なら知力向上とか。

 あとは、私の称号コード『創造者』みたいに、その人の功績とかを表すもの。

 確か『剣聖』とか『龍神殺しドラゴンスレイヤー』も作ってた、ような気がする。

 スキルとは違って、途中で増えたりするのが特徴。



 そんでもって、『鑑定晶かんていしょう』で分かる私のステータスは、昨晩クレアちゃんとゴリゴリに偽装しまくったので安心である。



 私が『鑑定晶かんていしょう』に触れると、昨日と同じように光が溢れ出して、やがてモニターのような画面が現れた。



「ふむふむ、メインスキルはやはり【偽装ぎそう】……………レベル99のカウントストップ状態ですね」



 表示されたメインスキルの項目を見ながら、メアリさんが呟く。


 私のメインスキル(ということになっている)【偽装】は、その名の通り何かをごまかしたり、消したり、すり替えたりするスキルだ。カンストしているのは、そうでもしないと『鑑定晶』の目をごまかせないからなんだとか。


 そして、昨日スキルを調べられたときには無かったスキルも増えている。



「そしてサブスキルは………………あっ、【剣技けんぎ】!レベルは30………これもなかなか強いですよ!」



 そう。スキル:【剣技】だ。

 もちろん剣の技のスキルで、このレベルだと『モンスターと一対一で戦っても大丈夫』なくらい。




「へ〜、これなら、【偽装】で敵の目をごまかして、【剣技】で敵を倒す………なんて戦い方ができそうだね」




 うっ、ローザさん鋭い………!


 実は、たった今ローザさんが言ったような戦い方をするつもりだったのだ。



 まあ、運動はあんまり得意じゃないけど、そこはクレアちゃんたち神様が作ってくれたこのハイスペックな身体が役に立つでしょ!

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