こ、これが………私?(わなわな) /敬愛するかの方は

 今回、★★★★★で視点が 楓→クレアに変わります。

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 朗報。


 朝起きたら美少女になってた件。




「うえっ、えっ、これ………マジ?この美少女私?私?ホントに?」


『あ、やっと気付きましたかー?』



 はっ!天のクレアちゃんの声!



「やっと気付いた………って、え?これクレアちゃんがやったの?」

『はいー。こちらで肉体を構成するときに、顔立ちをちょこっとイジりましてー』

「マジか………すっげぇ………私、可愛いかよ………」

『お気に召しましたー?』

「うん………ちょっと………よく見るわ………」



 じろぉぉぉおぉぉぉお。


 鏡に顔を目一杯近づけて、新しい自分の顔を見つめる。見れば見るほど美少女だ。

 途中、鼻息が荒くなりすぎて鏡が曇って見えなくなった。


 やば。拭かなきゃ。


 持ってきたタオルでゴシゴシ鏡をぬぐう。

 そしてまたほっぺをプニプニ、あっかんべー、小顔ポーズ。




「おほぉ〜」だとか「えへぇ〜」だとか変な声を出しながら自分の顔を見つめる私が、側から見たら完全な不審者であることは、残念ながらこの時の私は1ミリも気付けなかった……………………………




 ★★★★★





 ―――どうか、この世界のためにその力を使っていただけませんか?―――





 そう彼女が言うのに、一体どれだけの勇気が要っただろう。


 目の前の少女の機嫌を損ねてしまえば、全てが終わる。


 世界は、その少女の手の中。

 この世界の何人も、『神』でさえ彼女を縛ることは許されない。


 本題に入る前に、いくらかの好感度は稼いだつもりだ。仲良くなれていると思うし、話の通じない相手ではない。


 でも、万が一。

 自分の『何か』が彼女の逆鱗に触れてしまえば。

 彼女が怒ってしまえば。不機嫌になってしまえば。


 それで終わりだ。


 簡単に承諾されるとは思っていない。………思っていなかった。



 ―――なんだぁ、そんなこと?―――



 だからこそ、予想外だった。少女のその返答は。


 思わず何故と問えば、なんでもないように少女は言った。



 ―――私が作ったから、じゃない?―――


 ―――私、この小説せかいが好きだし。…………クレアちゃん達が困ってるなら、協力するよ?―――



 その言葉に、どれだけ胸を打たれただろう。


 あぁ、この方はこんなにも、我々を愛して下さっていたのか。


 天界で一部始終を見ていた神たちも、その場にいた自分も、彼女への尊敬を新たにした瞬間だった。


 この方ならばきっと、世界をより素晴らしいものにしてくれる。


 皆がそう思い、天界は歓喜に沸いた―――――――――



 のだが。


『うはぁ〜、目ぇでっっっっか………ニキビの跡とかどこにもないじゃんすげぇ……』



(本当に大丈夫でしょうかこの人………………)


 昨日と同じ白い白い部屋の中で、ひとりクレアは眉をひそめていた。



 今『秋月 楓』として動いているのは、彼女の魂をこちらへ呼んだ際に作った、元々の体とは別のものだ。

 自分自身とのお別れなのだし、多少サービスを………………と思い、読み取った彼女の深層願望から彼女の理想の体を作り上げた。


 そのため前世の楓とは容姿や運動神経など、肉体のスペックが異なっている。


 彼女が昨日そのことに気が付かなかったのは、スキル:【偽装】の中の【認識改変】でわざと気づかせなかったためだ。



『あっ、ここもちょっとサイズ上がってる…………うわぉ、ムチムチしてるぅ………』



【認識改変】はすでに解除されているため、自身の容姿の変化に気がつくだろう、とは思っていた。


(だからって、ここまでテンションが上がるとは思ってなかったんですけどー………………)


 下手したら、昨日異世界に来たときよりも喜んでいるのではないだろうか?


(昨日のあの感動を返してほしいですねー……………)


 あれだけ敬意を抱いた人が頬を染めながら自分の胸部のふくらみを揉んでいる様はなかなかにシュールである。



「えっとー……………創造主さまー?」

『んー?なぁにクレアちゃん』

「お気に召されましたかー?」



 ぎこちなく問いかけてみれば、かの少女は再びじっと鏡を見つめ………………


 そして自身の胸部をしっかりとホールドしたまま答えた。



「うん………………これで私、人生三倍くらい得できそう……………」



(顔だけでそんななりますかねー!?)



 心の叫びツッコミを全力で飲み込んだクレア。ファインプレーです、わたし!と心の中で自分自身に拍手を送る。



『ところでクレアちゃん』

「は、はいー?なんでしょう?」


『私の呼び方なんだけどさー』


(っ!?)


 しまった。何か不満があったのだろうか。


 思わず身構えてしまう。彼女を不満にさせるなんてことは、あってはならないのだから。



『その「創造主さま」っていうの、なんか別のにしない?』


「へ…………?」


『いや、ちょっと硬いっていうか…………たしかに私、この世界作ったけど………なんかこう、もっと距離近くてもいいんじゃないかな、って………………』


『ほら、クレアちゃん初めて会った同年代の人で……………それに、『お仕事』もお願いされちゃったし、これからも長い付き合いになっていく……………よね?そんな人に、「創造主さま」なんて呼ばれるの、ちょっと、ね』



 照れているのだろうか。彼女は頬をぽりぽりと掻きながら言う。



「ずるい、ですねー……………」


『へ?ごめん、なんて?』



「いえー、なんでも……………わたしは構いませんが、何かご希望はありますかー?」

『え?あー……………うーん…………じゃあ、「あるじ」とかどう?』

「あるじ」


(随分フレンドリーな呼び方ですけどー……………)


 まぁ、彼女がいいと言うなら、いいのか。多分。

 知らず、彼女の唇は弧を描いていた。




「じゃー、これからは主って呼びますねー!」

『うん!』





 かくして、ここに世界最強JKと幼女女神のコンビが誕生したのである。

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