計画通り……ってやつですかねー?〜???視点〜

「あ、スキルの偽装ぎそうは成功ですねー!」


 白くて白い部屋で、幼女は弾んだ声をあげた。

 彼女が見ている水鏡には、先程と同じ黒髪の少女。

 それから、少女を助けた『王子様』――――茜色の髪の女性。

 メガネをかけ、ギルドの制服を着た茶髪の女性。

 三人は、机の上の水晶玉を見つめていた。


「ふぅー、やっぱり【偽装】をカンストさせておいてよかったですー。ここであの方の本来のスキルが出ちゃったら、大騒ぎになりますから」


 あの少女はむしろその大騒ぎを望んでいたようだが、幼女にとってはあまりよろしくない。

 夜にしか姿を現わせない彼女があの少女に接触するには一人でいることが絶対条件であり、もしもあの少女にいたずらに力を振るわれるようになってしまっては、世界がめちゃくちゃになってしまうからだ。

 …………だからといって、自分のスキルが分かった時のあの少女の反応は予想外だったのだが。


「『スキルが【偽装】だったから嘘つき』って、そんなことないんですけどねー。あの方はどうも、こう思考が極端というか……………」


 たしかに、スキルは本人の素養や性格が反映されて与えられるものではあるが、【偽装】が出たからといって一概に嘘つきというわけでもない。

 そもそも【偽装】はかなり便利なスキルで、敵に追われている際に自分の姿や痕跡を隠したり、賭け事や交渉の時に表情をごまかしたり、相手が嘘をついているかどうか分かったり、記憶に干渉したり、鑑定晶の鑑定結果を改竄かいざんしたり、使い道は豊富だ。


 ………やっぱり嘘つきかもしれないが。


「ま、今回のやつはわたしがわざとつけたオマケですからー、気にする必要はありませんけどー!」


 現在あの少女には、彼女の手によって【記憶偽装】と【鑑定結果改竄】がかけられている。

 あの少女が「よく思い出せない」と言っていたのはこのせいなのだ。


「しかし、こう上手くいくとー、わたしとしても気分がいいですねー。あっ、これが『計画通り………!』ってやつですかねー?」


 ご機嫌な彼女は、ニヤリ…!とちょっと悪い笑みを浮かべてみたりした。



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