こうして人は、大人になっていくのさ……(アンニュイ)

 時間が、止まったかのようだった。



 私は、信じていた。このやけに見覚えのある異世界っぽい夢で、この瞬間から私のチート俺TUEEEEEEEが始まるのだと。私のスキルはそれはもぉすごい、(厨二的に)カッコいいやつだと。


 その結果が、コレだ。



 メインスキル:【偽装ぎそう



 ――――――………………は?


 となるのも、無理はないと思うのだ。



 え?あれ?コレなんて………【偽装ぎそう】?んん?いやいやいやいやいや、なんかおかしい。絶対、何か間違ってる。



 そう、間違っている。なにかの間違いなのだ。こんな【偽装】とかいう(厨二的な)かっこよさのカケラもないようなモノなんて。


 だが、残念ながら何度目をこすろうが深呼吸しようが、目の前に浮かぶ『メインスキル:【偽装】』という文字は消えてくれなかった。


 う、ウソでしょ………


 私はこの時、ここが夢だと仮説を立ててから初めて、『夢なら覚めてくれ』と願った。





「カエデさん、スキルは何でしたか?」



 受付のお姉さんが優しい声でそう聞いてくるけど、答えられない。

 このとき私の中でまだショックが渦巻いていたためだ。



「カエデ、恥ずかしがらなくてもいいんだよ」



 そう言ってくれたローザさんの優しさが今はつらい。

 違うんですローザさん。恥ずかしがっているわけじゃないんです。ただ妄想と現実の違いを思い知らされただけなんです。



「………………そうです」

「「え?」」



 ボソリ、と私は呟いたが、2人には聞こえなかったらしく、そろって聞き返されてしまう。

 うううぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁあああああ(羞恥)、もうっ!



「【偽装ぎそう】ですっ!私のスキル!」

「………え?」



 2人がぽかんとした顔になる。

 美人2人のそんな顔を見ながら、私は思った。



 …………………もう誰か私を殺して。

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