第4話 私たちも仲間に入れて
新婚の頃、中東の別の某国に旅行に行きました。まだ子供はいませんでした。
別の某国の人たちといっしょにバスツアーです。
ガイドが、「では、一時にここに集合してくださいね」
と、言いました。ホテルのラウンジでした。
一時になりました。
一組だけ現れません。バスツアーの参加者はほとんどがおじいさんとおばあさんでした。まあ、そういうことなので、みんな、「しかたないか」という空気になりました。一時間たちました。まだ現れません。ガイドも焦り始めました。ガイドが探しに行きました。さらに一時間たちました。
次第に空気が険悪になりはじめました。遠くで、ぽん、ぽん、という花火が大きくなったような音がしました。ラウンジから現地の人たちの姿が消えました。
それを見て、某国のツアー客の一人が言いました。
「こんなの待ってらんねえよ。自分たちで行くからガイドに言っといてくれ」
そのときでした。
ついていたテレビが市街の映像に切り替わりました。
わたしたちがいる、某都市の映像でした。窓の外に広がっている映像でした。
大きな建物の丸屋根から煙が上がっていました。これからまさに、そこに行くことになっていたのです。
火事のようです。
ガイドが血相を変えて飛び込んできました。
ガイドの言葉を聞き、騒然としました。そして彼らは何の文句も言わずにそこからいなくなりました。
でも、何と皮肉なことでしょう。私たちに某国の言葉は理解できなかったのです。
てっきり、「いなくなっていた人が見つかったから、先に個人で行っててください」
に違いない、と、解釈してしまいました。(今から思うと、「なんでだ⁉」という感じですが)
そこで、外に出ました。
何か煙いなあ、と思いつつ、地図を頼りに外に出ました。市内につながる行く道、行く道、すべてにテープが貼られていて通行止めになっていました。さっきまでたくさんいたはずの人の姿がありません。道を聞こうにも、人っ子一人いないのです。
散々迷った挙句、あきらめてホテルに戻ったら、ガイドに会いました。
「どこに言ってたの⁉ 外に出ちゃダメって言ったでしょ」
というので、
「あ、そうだったの?」
「自爆テロが起こったんだよ!」
あのテレビの映像。ただの火事ではなくて、爆発だったのです。
ガイドはほっとしたように言いました。
「さっき、集合時間に遅れた人たちいたじゃない? じつは、七十代のカップルだったんだけど、昼ご飯を食べた帰りに橋の下で泥棒におそわれてね。それで、ケガをして警察に保護されてたんだ。彼らのおかげでテロに巻き込まれなくて済んだよ。君たち外国人なんだから狙われ……」
そこで、ダンナを見ました。
「だいじょうぶか」
ほんとに、あぶないところでした。
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