カクノヒメ

鹿嶋 雲丹

プロローグ

 もはや私は、人間と言えるのだろうか。

 悪しきエネルギーをこの身に取り込み、それを善良なエネルギーに変えて放出するなど。

 まるで、なにかの道具のようではないか。

 これでは、なにかの企みに利用されても仕方がない。

 神器として、宗教を称する団体に祀られたり。

 悪しきエネルギーを糧とする、魑魅魍魎に狙われたり。 

 願わくば、この国の管理下に置かれたい。

 きちんと、役に立てるように。

 この国の人々の、平穏な暮らしが守られる、その礎の一つとなれたなら、私は本望だ。

 脈々と受け継がれていく、核の命。

 もう、私で終いにする。

 最後に望むのは、一度も見たことのない、海を見ること。

 大海原を渡る風をこの身に受け、海の向こうの世界を感じてみたい。

 それが叶ったら、後はもう、私の跡を歩く人にこの身を託す。

 その姿が人ではなく、まるで一つの水晶球のように、変わってしまったとしても。

 私は悔いない。ただただ、人々に幸あれ、と願う。

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