もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵(小説)
ネットのニュースで「本の雑誌」の設立者の一人である目黒考二氏の訃報を目にしました。
懐かしい名前です。
大学時代、読みまくっていた椎名誠関連で知った名前。
訃報の肩書にはエッセイスト、評論家、編集者の肩書がありましたが、私にとっては「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」に椎名誠が実名でおちょくるように書き上げていた方、「東日本何でもケトばす会」メンバーのイメージが強い方です。
目黒考二という人を知ったのは、椎名誠のエッセイの中に出てくる、
「本を読む時間がとれない」
という理由で勤めた会社をやめてしまうという、タイトル通りの活字中毒者の素人としてでした。
たまたま椎名誠のような著名人と知り合ったために、まさに本漬けの生活で生計を立て、名を立てた面白い素人、本好きで本漬けの生活をしたい者からすると、憧れの人といってもいい方でもあります。
本が好きだからといって、なかなかこんな人生を送れる人はいないでしょう。
それを面白がった椎名誠が書いた作品がこの小説です。
ある時小説家の椎名誠は、あることから、
「活字中毒者の目黒考二を味噌蔵に閉じ込めて活字に触れられない生活をさせてやろう」
と、思いつきます。
そしてまんまとその作戦にはまった目黒考二は活字のない生活を送らされることになり、精神状態にも異常をきたしていき、文字であればなんでも読むという状態に陥っていく。
活字を求めて必死になる目黒考二が探し出して繰り返し読むのが、
「エポキシ、エポキシ」
だったのは印象的です。確か何かにあった「エポキシ樹脂」か何かを読んでいたはずです。
かなりの数の椎名誠作品を持っていましたが、定期的に起こる本を処分したい欲求で、大部分は手放してしまったので、これが載っていた本はどこかの箱に入っているのか、すでに持っていないのかもちょっと覚えていません。
そういうわけで、私の中で目黒考二氏は、永遠の活字中毒者であり、本の虫のレジェンドでもありました。当時は私も本の虫で、本当に活字がないと目黒考二と同じ状況になるのではないか、ぐらい本を読んでいましたから。
そう言いつつも、もう長い間忘れてしまっていたので、今回のニュースはちょっとばかりショックでした。そして氏の年齢、70代の年齢にも少しショックを受けています。
なんとなく、永遠の悪ガキ達が集まってわいわいしてる印象のまま、私の中では時が止まっていたような感じでした。時間って流れるんだなあと思わずにはいられなかったです。
今、自分は当時ほど本を読んでいません。なんでだろうと不思議です。目黒考二ほどの中毒ではなかったけど、常に本を手にして、隙があったら読んでいた本の虫だったのに、ふと気がつくと、本は買ってないし、ほとんど読んでない。この年末、予約していた本が予定より早くまわってきて、忙しさのあまりとうとう1ページも読まずに図書館に返す、などとなってしまったことも、以前の自分からは信じられないことです。
本の虫のまま、本に人生をかけたであろう氏に敬意を払い、味噌蔵をちらっと紹介したいと思いました。
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