「手首」

「冷蔵庫に手首があるからチンして食べてね。」


テーブルの上にあった置き手紙には、か細い字でそう書かれていた。

 母が離婚してからは、僕が狩りがヘタクソなばかりに食生活は質素になっ

ていた。太腿肉なんて、もう当分食べていない。

 今日は金曜日。アルコールの混ざった肉は不味いから食べたくない、とも

言ってられない。受験期の中高生でも狙えればいいんだけれど…

 青年はそんなことを考えながら、手首には手をつけずに家を出た。研ぎ澄

まされた狩道具と殺意を持って。

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