10. 異なる意見の扱い方

 INM要素どこ……?こ↑こ↓


 さて、小説の中には、いろんなキャラクターがいるはずだ。

 そう言ったキャラクター同士が衝突するのはよくあること、というかそれをしてくれないと、そもそもドラマにならない。


 キャラクター同士が意見を戦わせたなら、同意をもって先に進まないといけない。

 いうまでもなく、キャラクター同士が尖った個性的な連中であればあるほど、それは困難を極める。


 例えば人を食いたくて仕方がない人食い虎と、人間のキャラクターを共存させようとするのは、とても大変なことになるのが、誰だってわかるだろう。


 異なる意見が対立した時、小学校では多数決を取るように教えるだろう。しかしあれは解決の手段に見せかけて、議論と問題解決から目を背ける方法なので、お薦めできない。


 さて、まずどういった基本軸で異なる意見を取り扱えばいいのか?

 それは2点ある。


 1.意見の対立をキャラクターの対立にしない事。

 敵と味方の関係であっても、彼らの状況や問題に応じて敵対関係にある、という構造にした方が良い。

 プロット上、融和する展開に持ち込みたい場合は、特にそうだ。


 例えば、人の魂を食わねばならない魔族と、人が対立してるとする。

 しかし、人の魂=エネルギー的なものを食する必要があると掘り下げていけば、魔族は人を食う必要がなくなる。

 するとどうだろう、人を食う事自体が目的になっている第三者を倒すために、人と魔族が協力する。なんて展開に派生することだって可能だ。

 仲間になった魔族が悩み、人間の家族に贖罪するなんていうのも、なかなかに良いイベントになるだろう。



 2.ほかの意見から学ぼうという姿勢を持たせる。

 キャラクターの意見が対立した際に、主人公やメインキャラクターが対話を放棄しないようにする。


 それぞれの意見にひとつくらいは、主人公という「個人の発想」の限界を超える、良い点があるものだからだ。


 もちろん展開上の意図があって無視するなら、それで構わない。

 学ぶ姿勢を持たせるといっても、物語に対して役目がない連中、山賊やらゴブリンの意見にまで、主人公が同意する必要は、まったくないからだ。



 さて、ここまでで、もう一度強調したいことがある。

 異なる意見に、同意をもって先に進む。

 これはいいかえれば、他人を受け入れるという事だ。


 意見を理解しようとする努力とはつまり、問題を整理して、因果関係を読み解き、「主張の根拠」を事実と推測から導き出すことだ。

 これまで長々と説明したこと、その要素がフルに必要になる。


 以上のことについての重要な理解は、「異なる意見を尊重する」というのは決して相手の言いなりになるという事ではない。それは理解の対極にある行為だ。


 「異なる意見を尊重する」というのは、異なる意見から、学び、わかろうとする姿勢を指す。なぜキャラクターは主人公と違う思考を持ち、行動するのか?それを理解して主人公が違う意見から何かを学ぼうとする。

 それが「主人公らしさ」になってくる。


 そして、わからないなら、わからないということを、受け入れることだ。


「主人公」とは、自身が持つ問題、世界が持つ問題を解決して、そこに至るまでのカタルシスを見せる存在だ。

 いろいろ旅をしたけど、わからない。でも実はそれでも問題はない。

 わかったふりをして、理解を拒絶する事、それは相手の言いなりになる事と、そう変わらない。


 さて、長々と10話にわけて説明してみたが、以上のことを念頭に置いて、原稿用紙に向かって見てほしい。

 問題を解決したり、理解するために勝手にキャラクターが動き出す。


 なぜこうなるのかはよくわからない。


 だがふと思った。


 物語に本当に必要なのは、100人を超えるキャラクターでもなければ、重厚な世界観でもない。

 ただ異なる問題を抱えた、人間が2人いれば良いだけなのかもしれない。


 おしまい。

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