第5幕 五人同時変身って滅多にないのよ
真っ黒いオーラ(敵キャラに現れるいつもの現象)が綾小路仲麻呂を包み込む。すると、彼の筋肉がまた一段と盛り上がった。「すげぇ!」と蝶介と秀雄が興奮するが、「違うでしょ!」と悠花に一喝され、シュンとなる。
もはや、五人の目の前に立っているのは綾小路仲麻呂ではなかった。目が赤く輝き、明らかに何か悪いものに取り憑かれたような感じだった。
「うおおおおおお!」
仲麻呂が大声を出して暴れ始めた。近くにいた通学中の高校生たちは悲鳴を上げて逃げ出す。そんな中、マジカル☆ドリーマーズの五人は怯むことなく、真っ直ぐな瞳で仲麻呂を見据えていた。そして、
「みんな、行くぞ!」
「うん!」
蝶介のドスの効いた声にみんながうなづき、それぞれポケットからコンパクトを取り出した。
番所蝶介は緑色のコンパクト。
城ヶ崎悠花は黄色のコンパクト。
海原秀雄は青色のコンパクト。
夢野真弥は白色のコンパクト。
夢野李紗は桃色のコンパクト。
「マジカル・ドリームチェンジ!」
五人が同時に声を出し、コンパクトが本体の色と同じ色の光を出して強く輝き出した。(ここから五人同時の変身シーン。画面を五分割して変身が行われる姿をご想像ください。今回は特別に番所蝶介の変身シーンを文字に書き起こしてみます)
まず、蝶介の巨体――首から下の洋服が消えて緑色に輝く。そしてぶっとい足のままのところに緑色のコンバットブーツが装着される。すね毛もたくさん生えているはずなのだが、緑色に輝いているためそこは映し出されることはない。鍛え上げられた太腿(だけど光っているから筋とかは見えない)あたりから緑色のスパッツ、プリーツの入ったひらひらドレスと次々に衣装が姿を現す。(まだ蝶介の巨体のまま変身は続いているんだぞ!)次に胸元に大きな白いリボンが効果音付きで飛び出してきた。丸太のような腕にも、肘まで伸びる白色のグローブが装着される。
ここまでの時点で、番所蝶介のムキムキの体に、マジカルバタフライの衣装。しかし、顔はまだ金髪オールバックの怖いままということを忘れないでいただきたい。ここでようやく、全身が光り輝き体が女の子サイズへと小さくなっていくのだ。と同時に、金髪が緑色のポニーテールへとごくごく自然に変化し、眉間にシワの入った怖い顔も可愛らしい女の子の顔へと変わっていく。髪の毛の結び目に白いリボン。さらには腰のあたりにあるポシェットにコンパクトが収まり、変身完了である。
身長180センチを優に超えるムキムキマッチョ、番所蝶介が、緑を基調とした魔法少女、マジカル・バタフライへと変身したのだ!
(他の四人も同じような感じで変身していく。どうして城ヶ崎悠花や夢野李紗を例にして説明してくれなかったのか、という質問は受け付けられないのでご了承願いたい)
こうして五人の変身が終わり、自分の名前を言いながらポーズをとるのだ。久しぶりの魔法少女なので、一応姿形も確認しておこう。
「夢を運ぶ魔法の風! マジカル・バタフライ!」
最初に登場したのは、ポニーテールの緑色の魔法少女。見た目は可愛らしい女の子だが秘めたる筋肉はすばらしく、あのマッスル★ナイトメア(今回は出てこないけど)に腕相撲で勝つほどの実力を誇る。その中身は筋肉ムキムキの男子高校生、番所蝶介だということは仲間しか知らない(だって戦闘中はいつも時間が止まっているから)。得意技は物理攻撃。魔法少女なのに、自分の筋肉を信じているのだ。
「夢を照らす魔法の光! マジカル・エターナル!」
続いて現れたのは二つ結びの黄色の魔法少女。ステッキを持っていないのに、持っている前提のポーズをとる。するとだんだんと見えてくるのだ、ステッキが(本当は持っていないけど)。もちろん変身しているのは、優等生だけど実は魔法少女オタクで創世記信者で鼻血担当大臣の城ヶ崎悠花である。
「夢を包む魔法の海! マジカル・オーシャン!」
肩ほどまでのゆるふわウェーブの髪型の青色の魔法少女も現れた。可愛い女の子、というよりはボクっ娘の元気な感じをイメージしてほしい。しかしそんなイメージとは裏腹に、補助魔法を得意とするのだ。変身前は超天才の男子高校生、海原秀雄である。オカッパ頭に丸眼鏡、おまけに最近マッチョになってきた彼も変身するとこうも素敵な魔法少女になってしまうのだ。
「夢を彩る魔法の祈り! マジカル・イノセント!」
夢野真弥が変身した、白色の魔法少女もかっこよく空から舞い降りてきた。元は綺麗な黒髪だったが、変身すると金髪に変化するのだ。頭頂部にある白いリボンがトレードマークで、落ち着いた雰囲気を持ち、それだけでなんとなく強いんだろうと見ているものを思わせる。動きの一つ一つに品があり(他の魔法少女にないとは言ってない)まさに王女の風格が感じられるのだ。
そして最後に登場するのはもちろんマジカル王国の王女、夢野李紗である!
「夢を叶える魔法の虹! マジカル・プリンセス!」
背中の真ん中ほどまで伸びた金髪はピンクへと変化し、頭頂部には同じくピンク色の小さなリボンが結ばれている。膝丈ほどのピンクのひらひらのドレスのような服を着ていて、胸元には母からもらった白いペンダントが輝きを放っていた。そして太ももまではピンクのスパッツを履き、戦闘中に変な誤解を招かないように配慮されており、また膝丈ほどのピンク色の靴下で極力肌を見せないように、もちろんPTA対策も万全だった。さらにはピンク色のコンバットブーツを履いていて機動力も十分確保。全身をピンクで統一した衣装に、いかにも魔法少女のリーダー(ピンク色……ヒーロー戦隊ものでいうところの赤色的存在)であるこだわりが感じられた。
「魔法少女マジカル☆ドリーマーズ!」
五人が思い思いのポーズを取りながら声を合わせ、ビシッと画面が引き締まる。本編では一回しか見ることができなかった五人同時の変身シーンが、今ここに復活したのだった。
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