第7幕 決戦! 宿敵ヒーヨワー!
「それにしても、まるっきり変わっちゃうんだなぁ。中身が蝶介と秀雄だなんて信じられないよ」
ぷっちょ君がマジカル・バタフライとマジカル・オーシャンを見て、そう言った。
緑色の髪に緑色の服を着た魔法少女がマジカル・バタフライ。本来なら風属性の魔法を使うのだが、基本的に物理攻撃しかしない
二人ともいつもは時が止まった状態で戦うので、他人に見られることはない。しかし今回はぷっちょ君に正体がバレている上での変身だったので、少し恥ずかしそうにもじもじしていた。
「あんまり
マジカル・バタフライが顔を赤らめながら体を小さくする。李紗はそんなマジカル・バタフライの行動を、筋肉ムキムキ男の蝶介が行っていると想像するだけでなんだかおかしくなるのだった。
「
李紗の視線に気づき、マジカル・バタフライが頬をぷーっと膨らませる。そんな二人のやりとりを、マジカル・エターナルが若干鼻血を出しながら楽しんでいたのであった。
「さあ、みなさん。お楽しみのところ申し訳ありませんが、この扉の向こうが玉座。ヒーヨワーが待ち構えているはずですわ!」
一人冷静な真弥が全員に声をかける。そうだった! ふざけている場合じゃなかった。私たちはこれからヒーヨワーを倒し、マザープロテインを取り戻すんだった! とマジカル・バタフライたちは当初の目的を思い出した。
「では、開けますわよ!」
真弥がゆっくりと扉を開ける。そこはもともとマッチョキングの玉座がある部屋。全体が白く、落ち着いた格式高い部屋……ではなく、玉座は腹筋ベンチ。周囲にはトレーニングマシンが所狭しと並んでいた。壁には「限界を超えろ」とか「筋肉はキッチンで作られる」などの筋肉ワードが達筆な文字で書かれたポスターがずらり。王様の部屋というよりはただのトレーニングルームといった感じだった。
「……ここが王様の部屋?
バタフライが目を輝かせながら周囲を見回した。うずうずして今にもマシンへ走り出しそうなところを、李紗が襟首を掴んで離さない。
「よくぞここまでたどり着いたな! プリンス・マッチョとその仲間たちよ!」
部屋の中にヒーヨワーの声が響く。だが、彼の姿はどこにも見当たらない。「あ、いた」ぷっちょ君が部屋の真ん中で仁王立ちしているヒーヨワーに気づいた。マジカル☆ドリーマーズの面々は、部屋にあるトレーニングマシンやポスターの印象が強すぎて、部屋の中心に立っているガリガリなヒーヨワーに気づくことができなかったのだった。
「
「超天才のボクも気付かないなんて、これは気配を消すのが相当上手だ!」
「え、ヒーヨワーってあんなにガリガリなの? ちょっと拍子抜けしちゃった」
「もしかして私でも勝てちゃうんじゃない?」
「栄養は足りているのでしょうか……心配です」
五人が自分の思いを好き勝手言うものだから、ヒーヨワーは眉間にシワを寄せて怒りをあらわにした。そしておもむろにポケットからマザープロテイン(宝石だよ。粉じゃないよ)を取り出すと、空高くかかげ、魔法を唱えた。
「ぐぬぬぬぬ……バカにしおって! こいつらの筋肉を全て奪ってしまえ! マザープロテイン!」
魔改造されたマザープロテインから、黒色の怪しい光が放たれ、マジカル☆ドリーマーズに襲いかかる。
「カスケード・ウォール!」
マジカル・オーシャンが魔法を唱えると、六人(マジカル☆ドリーマーズ+ぷっちょ君)を囲むように魔法の壁が発生し、マザープロテインの光を跳ね返した。
「なんだと!?」
ヒーヨワーはまさか魔法が跳ね返されるとは思わず、驚きの表情を見せる。マッスルキングダムのマッチョたちは体を鍛えることばかりで、魔法に対する耐性が全くといっていいほどなかった。だからこれまでヒーヨワーをはじめとするガリガリーズが無双状態だったのだ。しかし魔法を跳ね返す相手が現れた今、勝ち目がないことを悟り、ヒーヨワーは軽くパニック状態になってしまったのだった。
「さあ、一気にいく
ドゴン!
ガリガリで体重もあまりないヒーヨワーは、バタフライの物理攻撃で簡単に部屋の反対側の壁まで吹き飛んでしまった。
ボキボキボキボキ!
壁に当たった瞬間に、ヒーヨワーの全身の骨が折れる音が部屋中に響いた。
「ぐはっ!」
ヒーヨワーは口から血を吐いてそのまま地面に倒れた。
「え? 一撃?」
今度はマジカル☆ドリーマーズとぷっちょ君が驚きの表情を見せた。
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