過去、未来と君

kiwa

第1話 今の君

 タイムスリップして、未来の現実に五感が触れた時、涙が溢れる。


何か悲しいことがあったわけでもない。もしかすると、今から未来までの間に、この自分に悲しいことが降りかかったのかもしれない。



 僕は未来に行ける。未来と言っても、最大10年後までだ。それより遠くへは、行けた試しがない。


 未来は、「今」から成される。日々の積み重ねが未来になっている。


実際に未来に行ってみることで、改めてそう感じた。先生やバイト先の店長から、人生は積み重ねだと教わってきて、その教訓が日々、身に沁みる。


僕が、日々やるべきことをやれているか、未来に行くことで、客観的に見ることができている。


今回も悲惨だった、30代でフリーター。


どうしてだ、就活がうまくいかなかったのか?

単位は順調に取れている。テストは未来でカンニングすれば、オールクリアだ。


だが、未来に行っても得られる情報量は、少ない。「今」を進めないと、問題や悩みが見つからないからだ。だから、単発でしか問題を解決できない。


 授業が終わり、教室から出ると、いつも同じ場所に座っている女性を見かける。


しかも、彼女の体が一瞬で消えるのを、たまに見かける。


最初は僕と同じで未来に行っているものだと思っていたが、彼女のテストの成績も突出しているわけでもなく、投資とかでお金を稼いでいる様子でもなかった。


しかも、未来を変えて今をコントロールできる、この僕に予測できないことがたまに降りかかる。


彼女が、目の前で消えるという現象が起きる限り、疑いは彼女に降りかかる。


彼女が過去に行って、今を変えているという逆からの変化か?


そこにずれが生じて、互いに今を変えられない状況に陥ってしまっているのかもしれない。


大学の空きコマに、声をかけてみた。


「君は過去に戻れるの?」


彼女は目を大きく開けたが、口はキツく閉めて、他人とは関わりたくないようだった。


完全に無視された僕は、次の教室に向かうことにした。


過去でも未来でもなく、僕の自由を奪う監視員か何かなのか?


彼女がどういう存在の人物か、わからないままだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る