第10話 凶つ神

 買ったその場で直接立ち呑みさせるのが売りという酒屋だった。

 昼から駆けこむなり呑みに呑み、新右衛門はひたすら酒をつめこんでいる。


「もう一杯じゃ」


 売り子にひしゃくを手渡されるなり、酒の入ったひしゃくを口に当てて一息に飲み干す。とたん、胃の腑がくつがえるような嘔吐感がこみあげ、体を折って酒のすべてを吐き出した。周囲の立ち飲みの客があわてて離れる。


 苦痛に寸断される意識の隅で、売り子が「ここで吐くな、橋の上にでも行って吐け」と怒鳴っているのが聞こえた。


「……もう、一杯」


 注文すると、売り子は迷惑げに顔を歪め舌を売って、それでも新しい酒を手渡してくる。新右衛門は奪うようにしてひしゃくをもぎ取った。


 ――何升飲んだかわからぬのにまだ酔えぬ。薄い酒など売りおって!


 心を苛むものを塗りつぶせるまで呑むつもりだったが、酩酊が浅い。実のところ酒のせいではなく、罪の意識が酔いを妨げているとわかっていた。

 それでも呑み続ているうちに、混濁は遅まきながら訪れる。


 飲み過ぎたな、帰ればこがねに怒られるじゃろうな、といつしか考えている自分に気がついてばかばかしさに失笑した。


「自分で追い出しておいて何をくだらぬ……」


 宿に帰れば静かな闇が待っているだけだろう。ひとりきりだった。


 ――わしはいつからこのように女々しくなった。昔さすらっていたころはずっと独りだったではないか。

 ――あれがそばにいることに、慣れすぎたか。


 酒を重ねてあおり……ふと、気づいた。自分ですらこうも耐え難い。こがねはどうしているのだろう。


 ――あれは寂しがりだから。


 まぶたの裏に浮かぶのは、一匹っきりはさびしいようと野で泣く稚い少女だった。

 とつぜん利刃で刺されたような痛みが胸に走る。蒼白な顔を片手で覆って、新右衛門はうつむいた。しゃべる仔狐を見つけてから今日までの思い出がこみあげる。幸せになれるよう助けるとかれに約束し、そのとおりに献身的に支え、寄り添いながらずっと想っていてくれた唯一の女。


 しょせん畜生と見下げてそれを捨てた。宝珠を取り上げたうえで。


「畜生以下じゃ」


 おのれを責めるうつろな声。無意識のうちに、手指のあいだから漏れていた。


「だいぶ、酒を召しておるようですな」


 声がいきなりかかった。見ると、顔見知りの薬問屋である。

 自分の後ろにともなっていた店の奉公人に「先に帰っといで」と言いおき、薬問屋は新右衛門に話しかけてきた。


「聞きましたよ。おめでとうございます、播州で武家に戻られるそうで。よい婿入りの話ですな」


 痛烈な皮肉であることはその声の調子でわかった。

 なにをと食ってかかる気力もなかった。新右衛門はどろりと濁った憎悪の視線を投げたのみで顔を戻した。

 ところが薬問屋は立ち去るつもりはないようだった。


「こっちにもひとつくださいよ」


 ひしゃく酒を売り子に頼み、新右衛門の前で話しはじめた。


「先にここで祝言の酒を飲んでいきますよ。私があんたにあのお武家さまがたを引きあわせたのですからね。

 ところで……あんたが座衆に入りたいと言ってきたとき、なぜ私が渋り、『あんたはなにか違う』と言ったのかわかりますか」


「知らぬわ」


 もはや言葉遣いをつくろうつもりもなく、新右衛門は吐き捨てる。

 だが薬問屋はあくまでお節介を焼くつもりらしかった。


「私はね、あんたが商いや権力を好いているようには思えなかったのですよ。

 あんたの言うとおり、儲けたがるのは商人の性です。人の上に立ちたがるのも自然といえば自然です。ですがあんたは、銭そのものに惚れぬいているふうでもなかったし、人を従えたいと強く願っているふうでもなかった。

 野心をもっているから上に行くことに執着しているのではない。なにかから逃げたくて、上ればそれができると思っている。私にはそのように見えたのですよ」


 話してもいない過去のことを的確に言い当てられ、新右衛門の手から酒がこぼれた。


「待て、ど……どういう」


「いうなら傷への執着ですかな。失礼なたとえですが、私は昔、おかしくなった犬が自分の傷を舐めているのを見たことがある。舐めすぎて肉がけずれ、骨が見えているにもかかわらず舐めるんですな。舐めて治すといったっていい塩梅ってものがあるじゃないですか、あれじゃあねえ――」


 聞いている途中で耳鳴りを覚え、話がろくに入ってこなくなった。

 傷。

 暗い記憶。母親。


 名を上げてすべてを見返してやると、それを心の支えにして生きてきた。前向きに生きているのだと思っていた。だがそれはいつしか度を越した妄執に変わっていなかったか。


 ――復讐に囚われていたのは、わしなのか。


「……では、どうすれば幸せとやらは手に入る……」


 のどからやっとのことで押し出した質問を、薬問屋は鼻で笑った。


「私は銭に惚れてますから、銭が稼げれば稼げるだけ幸せですな。ですがね、そうですな、私が死ぬとき女房や息子にはなるべく多くの銭を遺してやりたいと思っとります。幸せにしてやりたい相手がいるというのはいいものです、お互いにそう思っていれば特にね。

 つまるところ、心のつながった者がいて、ともに笑っていられることが幸せじゃないですかね」


 心がつながった相手。

 くらりとまたもめまい。

 そういう者は、ずっとそばにいたような気が、する。だがさっきかれのほうから、一方的に絆を断った。


 ――世を見返すことに、こがねを捨てるほどの価値がほんとうにあったのか。


「……奥方に謝って、戻ってきてもらったほうがいいと思うがねえ。あんたが播磨で武家に戻ったって、幸せになれるようには思えないね」


 少ない酒ですっかり酩酊して口調もざっくばらんになった薬問屋が、わけ知り顔で説教する。


「早くしたほうがいいよ、奥方が傷心のところをだれかに口説かれちゃつまらないだろう。井口様のところにいるあの播磨の陰陽師なんかも――ほらあの顔のきれいないけ好かない男、会って知ってるだろ。先日、中村さまとあんたが会った日だけどね、わざわざ私のところに来たよ。あんたの奥方の話を根堀り葉掘り聞いてさ、不気味ったらないよ」


「……なに?」


 お節介な薬問屋のもたらした話は、それまでとは別の意味で新右衛門を揺さぶった。

 あの陰陽師は新右衛門と会ったときこがねのことをぴたりぴたり言い当てていた。が、実は前もって調べられていたようである。


 怖ろしい予感が胸を衝いた。

 狐退治の陰陽師。

 陰陽師は――通力のある狐を苦しめて殺し、それを式神として使役するという。




 夜の京を新右衛門はさまよっている。

 こがねがもう近江へ通じる粟田口の関を越えて京を出て行ったのか、まだ京にとどまっているのかはわからなかった。


 わからずとも、新右衛門は彼女を探さずにいられなかった。

 あの陰陽師がこがねそのものを気にしていた――聞いた話が、もしや危害がこがねに加えられるのではないかという懸念をかれに植え付けている。

 それに時間が立つほど、見えてくるものがあった。


 ――高禄の武家の身分に目がくらみ、狐珠をよこせとこがねに迫ったとき、わしは正気だったのか?


 すべてを否定はできない。あの醜いふるまいをさせたのは、まぎれもなく新右衛門の底にあった妄執であろう。そうとわかった上でなおかれは不可解に感じている。


 ――だが、あそこまでいきなりあらわになるものなのか。我がことながら、なにかが噴きだしたようになったのだ。


 陰陽師に妖しい術を使われ、鬱屈につけこまれた。そうとしか思えなかった。

 そのような危険な者にこがねが狙われているかもしれないとするなら、いてもたってもいられなかった。


「手を出させてなるものか」


 ――こがねは、わしの幸せを助けるとかつて言った。

 ――わしは……こがねの笑顔を見たいと思ったことはない。だが、それは、こがねをお袋のような女と重ねたくなかったからで……


 己の心の、これまで意識して見つめてこなかった部分が表層へいきなり噴き上がってきた。

 失うのが怖かった。

 こがねといる日々を捨てたくなくて、こがねを嫌ってしまう未来を怖れた。

 だが、彼女の笑顔をどれだけ思い浮かべても、嫌悪はいつまでも湧いてこないのである。


 ――浮かぶはずがない。


 思えば、これまでかれが憎んできた女の笑顔は、己の損得のためにかれを思い通りに動かそうとする者のものばかりだった。

 しかしあの朝のこがねの笑みは、なにもかれから求めていなかった。


 ――わしは愚かだ。やっと気づいた。


 笑みではなく笑みの裏にある打算をこそ憎んでいたことに。

 篝火かがりびをたく番所の警固武士や、辻君(娼婦)に行き会うたびに「これこれの姿格好の若い女を見なかったか」と訊きつづけた。夜な夜な出るという盗賊の存在も頭になく、足を引きずりながら闇の都大路をかれはけんめいに歩く。


 ――もう栄達も家の再興もどうでも良い。


 故郷が狐害に悩まされ、人々が死んでいることにも関わるつもりはない。


 ――わしはこがねがいればよい。あれに許しを請わねば……こがねをもう一度笑顔にせねばならぬ。


 奇妙な音が聞こえたのは五条坊門の、奇怪にも人気がまるでない辻にさしかかったときだった。



 ほう、ほほほほ――



 いぶかしむ。母喰鳥ふくろうかなにかかと、最初は思った。

 どん、ごろごろと、闇の向こうから丸いものが投げつけられて地を転がってくるまでは。


 足元にぶつかってそれは止まる。ぎょっとして足でつつく。

 人の生首だった。


「な――なんじゃ、これは」


 一挙に肌が粟立ち、新右衛門はふところの刀を探った。

 嗤い声。


「来た来た来ィた、そちらから来ねばもう少し生きられたものを――」


 とおん、とおんと軽やかにはねる足音。


 ボウ、魍、魍と宙に火が燃え、辻を照らした。

 そこに新右衛門が見たのは、あの陰陽師だった。


「今のはどういう……この首はいったい……」


 新右衛門は問いかけて、あたりの酸鼻な眺めを見回し、声を呑んだ。

 武士の屍四体が辻のそこかしこにあった。すべてがひざを折って座りこみ、血溜まりを作っている。天に向けた顔は苦悶あるいは恨めしげな面相となっているようだった。


 ――む、むごい……


 新右衛門はその屍たちの面相を知っていた。


 ――播磨侍たち……


 若侍・中村の死骸はぱかりとあごを開き、血をあふれさせたその口からは、刀の柄が生えている。残りの侍も同様で、刀先はあるいは喉から、あるいは腹から突き出ていた。


 かれらは自分の刀で串刺しにされているのだった。串を通された鮎のように。

 ひとつ首のない屍体がある。火球の明かりをもってさっきの生首をよく見下ろせば、それは年寄衆の井口の首であった。


 肝が縮み上がり、あえぎながらかれは強烈に悟った。


 ――思い違いをしていた!

 ――こやつは陰陽師などではないのだ。


 燃え盛る火球には見覚えがあった。


 ――これは、狐火だ。


「貴様……貴様が『串刺し狐』ではないか」


「ほほほほほ――人の愚かさ、ああおかしい」


 もとの名を長壁狐おさかべぎつねという堕ちた神狐は、袖を口元に当てて笑っている。


「播磨の館に雁首そろえた陰陽師どもの無能さよ。自分たちの長がとっくに食われて化け代わられていると気づいてもいやしないのだもの。長のみは多少できる奴で、おかげで争いあううちに通力をかなり損ねてしまったけれど……そやつもとっくにこの腹のなか。

 ここで死んでいる侍たちも、道中まったく疑いもせず、わが術のうちに深く深く惑うてくれた。

 おまえもそうだよ、小坂部家の裔よ」


 妖狐は新右衛門を扇子で差す。


「ありがとうよ、口舌誑くぜつたらしの幻惑にあっさり操られてくれて。小娘から珠をとりあげて持ってきてくれたのう、可愛い子や。

 それに、くくく、小娘を追い払ってくれたことも礼を言わずばなるまいね。人に肩入れしおる同族は、こちらの術を乱して厄介だからねえ――」


 扇子がさしまねいたとたん、新右衛門のふところから狐珠をおさめた巾着が飛び出した。

 あっと声をあげてかれはそれをつかもうとしたが、すでに妖狐の手に渡ってしまっていた。


「手に入れた、手に入れた」


 歌うように妖狐は言う。乳白色の珠が巾着からこぼれてふわり浮いた。


「比良の東の白辰狐の珠――これでわが力は高まる。

 人をもっと、もっと苦しめられる。

 でもやはり、すぐには馴染まぬのう――とはいえ数日もすればわが力と融け合あうだろうよ」


 喜色をあらわにする妖狐に、新右衛門は恐怖も忘れて怒りがつのるのを感じた。


 ――口舌誑。


 やはり妖術を使われていた。心の奥のもっとも弱い部分を煽られ、利用されて、こがねから狐珠を盗む片棒をかつがされたのである。


「貴様……仇討ちにしてもとうに度を越しておるであろうが。若殿を食い殺し、大殿を乱心に追い込み、無辜の幼児を刀で刺し殺しておいてまだ足りぬのか! ましてや大殿の血筋以外の者に対してまで――」


 そのとたん、妖狐は獣の顔を見せた。くわりと耳まで唇が裂け、火のように真っ赤な口が激情の声をほとばしらせた。


「先にわが一族を皆殺しにしたのは人だ。仔狐どもを串刺しにして巣穴の前に立てかけおったぞ。

 なにがあろうと許すものか、永久に祟り続けてやるわ。止めたければ殺してみせろ」


 妖狐が歩み寄ってくる。

 新右衛門は焦り、あとじさってふところの小刀を抜いた。思いついて手印も切る。山伏としてさすらっていたころに覚えた、九字。

 それに対し、妖狐は嘲りに頬をつりあげた。


「りんぴょうとうしゃか、形ばかり真似て笑わせるのう。術ならこのくらいやれ」

 伸ばされた妖狐の人差し指の先端にぽうと蒼い炎が灯り、陰々とした笑いを含む声が、


 比止ヒト布太フタ、身、与、伊都イツ武由ムユ奈那ナナ、弥、古々ココ――


 印が切られ、狐火の球が三個、五個、九個と増えていく。そしてとつぜん火柱と化してうねり狂い、大蛇おろちのごとく新右衛門をかこんで渦巻いた。


「人に三百六十の骨と五臓六腑あり」


 赤と青の火の向こうから読誦するかのように妖狐の声がした。


「九百の筋あり九百のにくきれあり、三升の血液あり三万六千の脈あり、九十九重の皮に九十九万の毛穴あり」


 火にとりまかれて立ち尽くす新右衛門のもとに、尻尾のような炎が幾条も伸びてきて、四肢、腰、首に巻きつく。

 熱くはない。だが鋼鉄の鎖を巻きつけられたかのように、全身が動かなくなっている。

 火のなかから歩みでた妖狐の手に、井口のものであったろう刀がにぎられている。

 刃がゆっくりとかかげられていく。


「小坂部の裔よ、こなたの家とは古い因縁。息の根を止めたのちはあたうかぎりの愛憐をこめ、ずいよりはだえにいたるまで、残らず食らって進ぜよう」


 恐怖にひきつる新右衛門の唇のはざまに冷たい鋼の先がさしこまれ、歯がこじあけられ……


 だが思わず目をつぶった瞬間、刀は口から抜かれ、妖狐の驚愕の声が聞こえた。


 目を開けたとき、かれはそこに探していた女を見つけた。


 ――こがね。


 変身が解けかけているのか狐耳を生やした女が、妖狐の刀を持つ腕にしがみついていた。今来たのか、元からかれのそばにいたのかはわからない。刀を奪おうとしながら、彼女は必死に叫んでいた。


「逃げて。あんちゃ、逃げて」


「この――小娘」


 術に抗する力を持つ同族と揉みあうことになって、妖狐は顔を歪めている。白辰狐の狐珠は、本来の持ち主であったこがねのほうに引きつけられて彼女のまわりを飛び始めていた。


 狐の力と力が相殺する。幻術が急速に破られはじめる。


 またたきのうちにあたりの狐火が消え、新右衛門の身にかけられていた金縛りの感触が消えた。


「邪魔をするな!」


 だが、同時に怒声をあげた妖狐がついにこがねを右腕から引き剥がし、彼女の胴に刀を突き入れた。新右衛門の悲鳴があがる。


「よせえ!」


 こがねは苦痛にうめきながら、自分の体を突き通した刀身を抜かすまいと両手でつかんだ。刺した刀身が抜けなくなって妖狐が焦りを見せる。


 ――こがね


 新右衛門の頭が真っ白になった。不具の足がその一瞬だけ、常人と変わらぬほどに強く地を蹴った。どん、と新右衛門は妖狐の背に体当たりしていた――刃をかまえて。


 妖狐の背から胸へと、かれの刀が突き抜けた。


 絶叫があがり、そして妖狐の左袖がひるがえって背後のかれを地に打ち倒した。頭をしたたかに打ちつけてぐるぐると視界が回り、意識が遠ざかり……




「五人も死んでおるぞ。なんとひどい死に様じゃ……人の業ではないぞ」


「見ろ、でかい狐も死んでおる。これは化け狐だったに違いない。この侍どもと闘ったのか」


「待て、一人生きているようだぞ。起きろ。おい、起きろ」


 目を開けたとき見たものは、たいまつをかかげた番所の兵たちであった。あまり時間はたっていないようである。新右衛門はずきずき痛む後頭部を押さえながら身を起こす。


「起きたか。これはおまえが討ったのか」


 番武士のひとりがかれの眼前の地面を指さす。

 そこには刀を背に刺した、並みの狐の三倍の大きさはあろうかという、四本尾の狐の死骸が横たわっていた。


 虚無的にそれを見やり、すぐ目を離して、新右衛門はたいまつが集まっている闇の辻に茫洋と瞳をさまよわせた。


 ――どこじゃ。こがねはどこじゃ。


「おお見ろ、ここにも狐がいるぞ」


 近くの塀沿いを照らした者から声があがり、新右衛門ははじかれたようにそちらに顔を向けた。


「まだ息がある」


「不気味な。片付けておけ」


 言いかわしながら番武士が太刀を抜こうとする。


「やめてくれ!」


 悲鳴をあげ、かれらの前に、まろび出るようにして新右衛門はふらつきながら飛びこんだ。

 壁ぎわまで這ったところで倒れていたらしい血まみれの狐の体におおいかぶさる。


「やめてくれ。これはわしの妻じゃ」


 あぜんとして動きを止めた周囲の者たちが、しだいに狂人を見るまなざしに変わっていく。

 一切それは念頭になく、新右衛門はこがねを両手で抱き上げる。足を引きずりながら囲みを出ていった。

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