第6話 打ち解けたことを喜んで

 料理好き(?)というアンナの新しい一面に驚くとともに、やたら興奮した様子のアンナを微笑ましく思っていると、


「も、申し訳ありませんっ」


 かなりテンションが上がっていたが我に返ったのだろう、そそくさと椅子に座り直し、そう謝罪してきた。


「謝る必要はないよ。寧ろ、アンナの新しい一面を知れて嬉しいくらいだから」


 落ち着かせるためにそう告げると、むしろ頬を朱に染めて恥ずかしそうに呟く。


「お恥ずかしいです……」


「恥ずかしがることなんてないのに」


 そういってアンナを宥めようとするが、俺が微かに笑っていることに気付いたのか、


「ラ、ラース様!私のこと笑っていませんかっ?」


 確かに表情は笑っているかもしれないが、別にアンナを馬鹿にしたり、からかったりしている訳ではない。


「あはは、そうかな?」


 そう言って誤魔化すと、


「………もうっ」


 そう小さく呟き、少し唇を尖らせる。


 赤くなった顔でその表情は中々に破壊力がある。


 

 

 しかし、それ以上に……


(初めに比べたら、大分アンナさんと打ち解けられたかな)


 転生してからは、まだアンナとほんの少ししか会話をしていないが、それでもある程度気安く話すことが出来るようになったことを、嬉しく思った。



 

 

 その後は二人で一緒に食事を済ませ後片付けをして、現在はそのまま食堂の中で会話をしている。


「そうだアンナ、適当なもので良いから動きやすい服を用意して欲しいんだけど」


「動きやすい服ですか?はい、かしこまりました。…………えっと、それはなぜなのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 俺の頼みに一先ず了承の意を返したアンナだが、

 先程、俺が剣を振ろうとして気絶したことを思い出したのか、不安そうに理由を尋ねてくる。


「もう興味本位であんな真似はしないから安心して。今度は普通に、痩せるために運動しようと思ってね」


 あんな馬鹿な真似はもうしないことを伝えつつ、理由を説明する。


 ラースの悪いイメージを払拭するための足掛かりとして、痩せることは最重要項目の一つだろう。

 

 人の印象は見た目が大きく影響すると言うし、外見を良くすることには大きな意味があると考える。


 それに………


(流石にこの体型は考えられない)

 

 前世の俺、水無瀬令人は普通に痩せていた。太った経験もないため、今のこの状態は到底受け入れられるものではない。


(絶対に痩せる。絶対だ……)


 アンナは、俺の言葉に納得してくれたのか、


「なるほど、それはとても良いことだと思います。では、私も体型改善のための食事をお作りしますね」


 と、そんなことを言ってくれる。


「それはすごくありがたいよ。じゃあお願いするよ、アンナ」


 そう告げると、アンナは「かしこまりました」と優しい笑みを浮かべながら、頷いてくれた。

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