4/17~4/24 山道

4/17

 昼前、今日ものんびり森を歩くことになるのかと思っていたところ合図が鳴る。

 鹿に遭遇したのは電蜂で俺は鹿の逃げ道を予測してそれを潰すように動くことになった。これはこれで経験を要する難しい作業だったりする。

 ベテランの追い手なら単独で攻撃役のところまで獲物を誘導できるがはじめてでそんなことができるやつは天才だ。できなくて当然。というか俺だってたまにミスる。

 電蜂は俺と九林のフォローでもってなんとか鹿を追い込むことに成功。残りは底見の仕事となったが、若い連中はわりと遺物の扱いに慣れているもので跳花はあっさりと鹿の眉間を貫いた。

 結果は上々。こいつらならすぐにも俺ぬきで星角鹿ぐらい狩れるようになるだろう。

 その後、肉屋に持ち込んでいくらかわけてもらって、ごった煮屋にて反省会(という名の打ち上げ)。

 せっかくだからナナフシに調理してもらう。単純に焼いただけだがやはり素人がやったものとは違う、美味い。

 新米どもとはその場で別れる。


4/18

 肉屋を訪ねる。

 運び込んではい終わりでは向こうも大変だろうから解体作業を手伝う。といってもこちらも別段その技術にすぐれているわけではない。本職には大いに劣る。

 まあ向こうからすればいないよりましといった程度だろう。

 昼過ぎちょうど店先を電蜂が通りがかったので声をかける。何してるんすかと聞かれたのでそのまま正直に肉屋の手伝いをやってることを告げる。

 ついでに話の流れでいろいろできるとそれだけ冒険者としての幅が広がるみたいなことを言う。なんだか年をとったようでそんな説教はしたくなかったが。いや実際年をとってるんだが。

 その後はなぜか電蜂も解体を手伝っていた。

 日が沈むころにようやく仕事が終わる。夕食は手伝い賃としてもらった肉。


4/19

 鍛冶屋に剣を持っていく。

 本当は案陽市から帰ってすぐ行くつもりだったがついのびのびになっていた。大事な商売道具なんだから気をつけて気をつけすぎるということはない。

 じいさんに見てもらったところまだまだ問題ないと言われる。が一応手入れしてもらう。その手伝いをしていたら結局その日は1日鍛冶屋の助手で終わっていた。

 連日そんなことばかりだと本職を忘れそうになるがまあいいだろう。

 店を閉じてじいさんといっしょになじみの酒屋に飲みに行く。大いに飲んでいたところ店の親父から依頼を受ける。

 といってもその時点でがっつり酒を入れていたので詳しい話は明日聞くことになった。


4/20

 依頼内容は酒の買い出しだった。

 東の山を越えたところにある酒造から酒を大量に買ってきてほしいとのこと。何回かやったことがあるし取引先のことも知っていたので二つ返事で引き受ける。

 1人でやるわけにはいかないから女史に相談すべくその足で教会に出向く。ただし向こうもいつだってヒマというわけではないので、明日の同じ時間を空けといてくれと頼んで帰った。

 帰り道、九林に会う。明日、時間があるようなら教会の方に顔を出すように言っておく。本決まりではないが多分こいつらに頼むことになるだろうから。


4/21

 俺、女史、九林、電蜂、底見の5人で打ち合わせ。

 東の山を越える瓶鶴道の現状について。

 最近のところ荒れてるといううわさは聞かない。ただしあのあたりはいつだって賊がぽこっと出てくる地域だから油断しない方がいいだろう。俺とガキ3人組で戦力としては足りていると思われる。

 道自体も比較的整っていて坂山馬車でも問題なく通れるとのことなのでその場で手続きして教会から1台借り受ける。行き帰り余裕をもって10日間。

 出発は明日、向こうにも集落はあるからそこまで考え詰める必要もないが、それなりの準備をしておくように告げて解散。


4/22

 朝日とともに街を出る。

 山に入る前からしっかり隊列を組んでおく。

 先頭は目のいい九林に任せる。坂山馬車の両脇に底見と電蜂が並ぶ。俺は最後尾で全体をながめる位置を歩く。とりあえずこれで。問題があるようなら臨機応変に対応する。

 などどと考えていたら早速トラブル発生。先頭の九林がばてる。

 原因は端的に言えばはりきりすぎ。常に100%の注意で警戒なんてしてたらくたびれて当然だ。

 難しい注文かもしれんがほどよく気を張ってりゃいいんだということを伝える。一旦下がらせて代わりに電蜂を前に出した。

 その後は特に問題なし。


4/23

 山道に入る。先頭は再び九林に任せる。

 昨日のアドバイスのおかげかひとまずいい感じにやっていた。結果論になるがその日1日平穏無事にすごせたんだから、仕事はやれていたということになる。

 ペースも早すぎず遅すぎず現時点では何の問題もなし。順調。


4/24

 先頭を今度は底見に交代。

 九林に問題があったわけではない。3人いてそれぞれが専門化しても構わないがそれだと応用がききにくい、それぞれ得意分野はあってもそれなりに他のこともできるようだとチームとして強いと説明。

 とりわけ1人で行動することの多い自分だからそう感じているのかもしれない。飛び込みでよそのチームに入る時でもできることが多いと役割を果たせる可能性は高くなる。

 水がうまい。酒どころが近くなっているとわかる。

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