第8話 殲滅させた村といじめ

深夜、自分の部屋でいかがわしいことをしてると、LINEのメッセージが届く音がした。


いかがわしいことを途中でやめて、スマホを開いた。


キララから来たメッセージは、

『寝込みを襲われた。近くの村の奴らに』だった。


『マジか?』

『火のついた竹槍を投げつけられた。私もユリナも敏感肌に傷がついた』


敏感肌にはツッこまず、


『まだ襲って来そう?』

『大量のたいまつの火が近づいて来る。その一つ一つが村人たちみたい』


すげえ量だな。


『ドラゴンは呼ばないの? つか、どうやって呼ぶの?』

『ルールル ルルル ルールルって呼ぶと飛んで来る』


そのルールルが、キタキツネの呼び方なのか、徹子の部屋のテーマ曲なのかは、わからない。


『じゃあドラゴンをすぐ呼んで。絶対、死なないで。わかった?』


『わかった。ありがとう』


メッセージのやり取りが終わった。


大丈夫かな。初めての本格的な対戦だし。

でも俺がいくら案じても、異世界には届かない。


俺はまたいかがわしいことを始めた。そしていかがわしさに疲れて、そのまま眠ってしまった。


翌日、また昼飯を食べた後に体育館裏に行く。


今日はいつもいじめられてる生徒と、

いじめてる3人の生徒がいた。名札が一学年上の奴らだった。


奴らは殴る蹴るしていた。殴られて眼鏡が空中に飛び、リアル忍法メガネ残し、みたいになった。

ちょっと笑った。


俺は笑顔で、

「おい、やめろよ」と言った。情緒がおかしい人みたいだ。


「はあ、なんだてめえ」

いじめられてる生徒の胸ぐらをつかみながら、その主犯格の男は言った。暴行という犯罪を犯してるのだから、主犯だ。


「だからよお、ダセェんだよ、いじめとか。俺の前でダセェことしないでくれる? マジで」


主犯格はいじめられっ子の胸ぐらから手を離し、

俺に向き合った。


俺はすぐにそいつのボディにパンチを入れて、股間を蹴り上げた。そいつはそのまま倒れ込んで動かなくなった。


「なあ、お前らも知ってるだろ? あの横断歩道の事故でうちの女子生徒が亡くなったの。あれ、俺の彼女なんだぜ。


なあ、俺もう失うもんねえんだよ。お前ら全員ぶっ殺して親兄弟もぶっ殺して、ペットもぶっ殺して、ガソリンかけて家も燃やして、水道管を破裂させたら、火事が鎮火して、って止まんねえぞ、今の俺はよおっ!」


残りの2人は元々こいつの舎弟みたいなものだったのか、青い顔をして、主犯を置いて逃げて行った。


俺は寝てる主犯を蹴って、「てめえも起きてどっか行けや。ここで今から寝るんだからよ」


そいつは股間を押さえながら立ち上がり、おじけづいた表情で、逃げて行った。


いじめられてまた顔にアザを作った彼が、俺に近づいて来た。


「ありがとう。あいつらにいつもやられてたんだ」


「うん、これでもうやられないよ。やられたらまたやってやるよ」


「あの……横断歩道で轢かれた女子って」

「うん、本当に俺の彼女だよ」

「それは、つらいよね」


その時、LINEが来た音がした。

スマホをポケットから出すと、キララからのメッセージが届いていた。画像も添付されている。


「そうでもないよ。俺の彼女はまだ生きてるから」

そう言って、メッセージを見た。


『私とユリナとドラゴンで村を殲滅させた。ユリナが杖で刺してるのは、村の長の生首』


僕は添付された写真を見た。

天に向けて火を吹くドラゴンの前に、

キララとユリナがピースサインをして、写っている。


自撮り棒を使ってないから生き残った村人にでも撮らせたのだろう。


ユリナの杖の、魔法陣の部分に刺さっている生首がグロい。


『ユリナさあ、相当こいつに頭きてたんだろうね。生首におしっこかけてたよ』


倫理観。


ふと、俺はこのLINEを彼に見せたくなった。


「俺の彼女、異世界で生きてるんだ」

俺はメッセージと写真を見せた。


すると彼はそのメッセージと写真を見て、

「すげー、すごいよ。異世界に転移したんだね」

「転移?」


「死んで生まれ変わったんじゃなくて、そのままの姿で異世界に行くことだよ。村を殲滅って、Lvもアップしただろうね」

「あ、ねえ、ラノベとか詳しい人?」


「詳しくはないけど、何冊かは読んでるよ」

「そうなんだ、あ、名前聞いていい?」

「亀井静雅(せいが)」

「じゃあカメね」いじめられていたカメ。

「キミは?」

「俺は入来奏夢(リズム)、リズムでいいや」


俺はLINEでキララにこんなメッセージを送った。


『村を殲滅させるって、すごいな。俺も今日、いじめを殲滅してやった』


『そうなんだ、良かったね』

うん、良かった。でも生首にションベンかける奴って、やっぱ怖ええな。

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