第29話 右肩下がり ※スターム侯爵家当主視点

 最近、関係が深かった貴族達から距離を置かれている。ペトラに準備を任せて主催したパーティーが、失敗続きだったから。


 そして、誘われる機会も激減した。交流の場が減って、社交界で孤立気味になっている。周りとの取引もどんどん減っていき、稼ぎも減っている。そんな、悪い状況。少し失敗しただけなのに、周りが厳しすぎると思う。


 それにペトラも、もっと出来るだろうと思っていたのに予想が外れた。これなら、もう一人の娘が居た時の方が上手くいっていた。厄介だと思っていだが、利用価値は十分にあったのだ。その事を、今更になって気付いた。他に家に引き渡してしまったのは失敗だったかもしれない。


 ハルトマイヤー公爵家も同じような状況で徐々に立場が危うくなっているようだ。


 こんな事になるなんて、予想していなかった。どうして、こんな酷い状況になってしまったのか。


 このまま何も対策しなければ、資産が尽きてしまうだろう。どうにかして打開策を考えなければ……。


 そんな状況なのに、娘のペトラはわがままを言ってくる。ドレスやアクセサリーを何でも欲しがる。なんとか願いを叶えてやりたいが、難しいものは難しい。少しだけ厳しく言って、娘を納得させた。今は、無理できない。


 そんな娘のペトラだが、婚約相手との関係も悪化させているらしい。パーティーの件で、色々と言われたようだ。


 今まで娘に責任を押し付けてきたのに、いまさら文句を言ってくるなんて。相手の文句を聞いて、納得が出来ない。だけど、公爵家との関係を途切れさせるのは絶対にダメだろう。次期当主である彼の言うことを素直に聞いて、何とか関係を続けさせるしかない。


 解決しなければならない問題が山積みだった。だが解決方法が全く思いつかない。どうすればいい?


 やはり、もう一人の娘を取り返す必要があるかもしれない。以前のような良かった頃の状態に戻すためには、彼女の存在が必要不可欠なのかもしれない。


 ベリンダが戻ってきてくれたら、全てが元通りになるはず! 取引したことは全て無かったことにして、病死させたことなんて有耶無耶にしよう。それなら、なるべく早く取り戻さないと手遅れになってしまうかもしれない!! 


 私は娘を取り戻すため、ナハティガル男爵家に手紙を送った。ついでに、間を取り持ってくれたエンゲイト公爵家にも手紙を送る。


 娘が戻ってこなくても、もしかしたら私達が困っている現状を知って助けてくれるかもしれない。先に、向こうのお願いを聞いてあげたのだから。今度は、私の願いを聞いてほしい。そんな期待も込めて私は、ナハティガル男爵家とエンゲイト公爵家にお願いの手紙を出した。


 これで、今の悪い状況が変わるはずだ。我が家に娘が戻ってくるか、それとも他の誰かが助けてくれるのか。

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